第25話

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820
2019/10/18 09:55
慎は私が落ち着くまでずっと私を抱きしめていた。

私をゆっくりと、慎の背中に手を回した。
You
You
これからすごくひどいことを言う。
謝っても謝りきれないくらい、私のことを恨みたくなるくらいのこと。
慎
どんなこと聞いても、憎まない。
You
You
嫌いになるよ。
慎
なったとしても、
ちゃんと聞くから大丈夫。
You
You
うん、ありがとうありがとう...
慎ことは何も言わず私を抱きしめていた腕の力を強くした。

まるで、どこにもいかないでほしい

と、言われているようだった。

You
You
ずっと付き合ってた人がいたの。
彼の耳元で私はゆっくりと話し始めた

慎は黙って私の手を握った。
You
You
すごく好きだった。今でもずっと...
好きで忘れられない。
You
You
でも、その人病気で...
じわりとまた、私の目に涙が浮かんだ。
慎
うん...
You
You
認めたくなくて、わたし。
You
You
もう、いないなんて...信じられなくて、
ずっと前を見れずに、
今でもまだ彼の事ばかり考えてる。
慎
うん...
You
You
慎の気持ちはすごく嬉しかったの。
慎と一緒にまた、笑えたらいいと思ってた。
You
You
でも、そうしたら彼が消えちゃうみたいで、怖くて...
いつの間にか慎に陸のことを重ねてた...
もう涙は止められなくて、

言葉とともにこぼれ落ちていた。
You
You
ずっと...ずっと慎のこと利用してたの
最低だよ、私。 本当に、最低...
You
You
ごめんなさい...ごめんなさい.....。
謝ることしかできなくて、

自分を責め続けることしかできなかった。

もう慎とはいられない。

謝りきれないほどの罪、

憎まれてもおかしくない。

私はずっと、

それと向き合おうとしていなかった。

慎
うん...。
なんとなくわかってた。
慎
誰か俺じゃない人の事を考えてるって。
慎は私の頭を撫でながら、

寂しそうな声でゆっくり話し始めた。
慎
病室で告白したとき覚えてる?
You
You
うん...。
慎
あの時、他の誰かの方を向いててもいいって言ったけど、あの時は本当にそう思ってた。
慎
誰の代わりでもいいから、
ずっとそばに居たかった。
慎
でも今は...
彼は深呼吸するようにゆっくりと息を吐いた。
慎
誰の代わりでもなく、
俺だけを見て欲しくなったんだ。
ずっと、我慢してた。そばに居られるならそれでいいって思ってた。
慎
でもやっぱり、それは違った。
俺は...。
彼の手を強く握った。
慎
誰の代わりにもなれない。
優しく、けれど芯のある声で慎は言った。

そしてゆっくりと私を引き剥がすようにして自分から離した。

慎の目はいつもと同じように、

私のことを純粋に、

ただ真っ直ぐに見つめていた。
慎
やっぱり俺たちは一緒に居るべきじゃなかった。あなたも、俺も。
慎
誰の代わりにもなれないし、
しちゃダメなんだ。
慎は泣きそうになりながら、

それでも私の事をしっかりと見つめたままそう言った。

悲しみで溢れた慎の瞳は、

ただ、綺麗だとしか表せなかった。



慎
今までありがとう。
別れよう、俺たち...
彼はそう言って今にも壊れてしまいそうなものを扱うように、

大切そうに、

優しく、

私の唇にキスをした。

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