慎は私が落ち着くまでずっと私を抱きしめていた。
私をゆっくりと、慎の背中に手を回した。
慎ことは何も言わず私を抱きしめていた腕の力を強くした。
まるで、どこにもいかないでほしい
と、言われているようだった。
彼の耳元で私はゆっくりと話し始めた
慎は黙って私の手を握った。
じわりとまた、私の目に涙が浮かんだ。
もう涙は止められなくて、
言葉とともにこぼれ落ちていた。
謝ることしかできなくて、
自分を責め続けることしかできなかった。
もう慎とはいられない。
謝りきれないほどの罪、
憎まれてもおかしくない。
私はずっと、
それと向き合おうとしていなかった。
慎は私の頭を撫でながら、
寂しそうな声でゆっくり話し始めた。
彼は深呼吸するようにゆっくりと息を吐いた。
彼の手を強く握った。
優しく、けれど芯のある声で慎は言った。
そしてゆっくりと私を引き剥がすようにして自分から離した。
慎の目はいつもと同じように、
私のことを純粋に、
ただ真っ直ぐに見つめていた。
慎は泣きそうになりながら、
それでも私の事をしっかりと見つめたままそう言った。
悲しみで溢れた慎の瞳は、
ただ、綺麗だとしか表せなかった。
彼はそう言って今にも壊れてしまいそうなものを扱うように、
大切そうに、
優しく、
私の唇にキスをした。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!