彼に、彼の友達が私に会いにきた。
私はずっと、
別れてからも離れてからもずっと、
彼のことで頭がいっぱいだった。
彼の友達言った。
あいつには失望しないでくれ、と。
彼は私に弱い姿を見られたくなかった。
陸はもう先が長くなくて、
あなたを幸せにできない自分が、
あなたの隣に居続けることが出来ない自分が
よっぽど悔しかったんだと思う、と。
陸、
なんで...
言葉が出ないとはこういうことか、と。
私は何も言わずに、
何も言えずに呆然としていた。
彼の笑ってる顔が、
私を愛おしそうに見つめる瞳が、
楽しそうにはしゃぐ姿が、
彼の腕の中の体温が、
私の中を流れて血となっていくように何度も、
何度も思い出された。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。