あなた side
つめたい空気が頬を伝う。
もう少しでクリスマスがやってくる。
街中はその日が迫るにつれていっそう華やかに、
きらびやかになっていた。
大きく息を吸うと澄んだ透明な空気が私までも透明に空気が、
私までも透明にしてしまうかのように体の隅々まで染み込んだ。
吐息は白く前に現れて、静かに消えた。
言葉に出して言えるくらいまで何度も繰り返して読んだ陸の手紙は、
陸と過ごした記憶と共に大事にしまった。
私の心の引き出しは、
もういた何かを取り出してもいいくらい綺麗に整頓されていた。
小さく伸びをすると、
彼がどこかで見ているような気がして自然と笑みがこぼれた。
どこからか流れてくるクリスマスソングのメロディーは、
私の温かい記憶を思い起こさせた。
口ずさみながら、
ゆっくり歩みを進める。
_____大切な人のもとへ。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!