第29話

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2019/10/21 04:30
帰り道

よく彼が来るのを待っていたバス停。

今日は誰を待って座るのか。

私はぼーっとしながら、

バス停のベンチに腰を下ろす。

目の前の車道をただ車が過ぎ去っていくのを見る。

バス停の灯りが、

チカチカとついたり消えたらしていた。

陸はなんていうだろう。

もし陸がここにいたらなんて言っただろう。

バカだなあって、私を笑い飛ばすだろうか。

他の男なんか見るなって、唇を尖らせて拗ねるだろうか。

彼はなんて...いうだろうか。

空を見上げると街中の灯りのせいでただくらい空が広がるだけだった。

ひたすら空を見上げて、

ぼーっとしていたときだった。

???
???
何してんの?
You
You
うっ!わぁ!?
翔吾
翔吾
何してんの、驚きすぎでしょ...
You
You
翔吾さんが!突然!だって!!!
驚きで言葉が出てこなくてぱくぱくと口だけが開いたり閉じたりを繰り返す。
翔吾
翔吾
分かったって、落ち着いて。
笑いながら私の肩を両手でぽんぽんと叩いて、

彼は私の隣に座った。

それにしてもすごく久しぶりに会った気がする
You
You
何してるんですか?翔吾こそ
翔吾
翔吾
そりゃー俺はあれだよ。
目の前に停めた車を指差して、

ドライブしてた、と言った。
翔吾
翔吾
そしたらなんか久しぶりに見る顔がいるからさー、元気かなと思って。
翔吾さんは私の顔を伺うようにして、

寂しげに小さく微笑んだ。

そして少し不満そうに、
翔吾
翔吾
俺が車から呼んでんのに全然気付かないんだもん。わざわざ降りてきてやったんだぞ。
と、笑いながら言った
はははっ気付かなかった、と私もつられて笑う

すると、翔吾さんは空を見上げながら、

声色を変えて言った。
翔吾
翔吾
そろそろ一年経つだろ。
色々な感情が含まれた言葉。
You
You
そうですね...。
翔吾さんは陸がよく慕っていた友人の1人だった。

面倒見も良くて、

陸と同じように私の事もいつも気にかけてくれた。

陸がいなくなってから、

翔吾さんは私の事を度々心配してくれていたけれど、

私は人と関わるのをやめてしまったから、

いつの間にか連絡も途絶えさせてしまっていた
翔吾
翔吾
新しい彼氏とは上手くいってんのか?
どこから聞いたのか、

その言葉に驚いて翔吾さんの方を見る。
翔吾
翔吾
そんなに驚かなくてもいいだろ。
You
You
なんで知ってるんですか?
翔吾
翔吾
見かけたんだ、一緒に居るとこ。
You
You
あー、なるほど...
ど小さく呟いて下を向いた。

大きく吸った息が、白く曇った。
翔吾
翔吾
なんだ、振られでもしたか?
翔吾さんはそんなわけないよな、

と笑いながら私を見た。
You
You
まぁ...。
それだけ言った私に驚いて、

翔吾さんは飛び跳ねるように、

「はっ!?」

と言って自分の体を私の方に向けた。
翔吾
翔吾
本当かよ...
って嘘なんか言わないよな...
うーん、そっか...と何か考えを巡らせて彼はまた空を見た。
翔吾
翔吾
陸のことでだろ?
翔吾さんは全てお見通しかのように、

落ち着いた声でそういった。

その通りで何も言えずに、

私は、黙ったままだった。
翔吾
翔吾
いいんじゃないの、
他の誰かを好きになったって。
翔吾さんは軽くじゃなく、

しっかりと落ち着いたトーンで言った。
You
You
でも、怖いんです。
本当に陸がいなくなってしまうみたいで...
翔吾さんははぁー、と呆れた顔で大きなため息をついた。
翔吾
翔吾
いなくなったりするわけないだろ。
陸だぞ。一生経っても俺の記憶からは消えてくんないよ。
翔吾
翔吾
そうだろ?
You
You
確かに...
陸の無邪気な笑顔を思い出して、

心が温まって行く気がした。

いつまで経っても、

彼は私の中から消えることはない。

私の中にいる彼はすごく、

温かかったんだから。
翔吾
翔吾
お前に彼氏ができたら渡して欲しいって、あいつが言ったの、今持ってないんだけどさ。
You
You
え...?
翔吾
翔吾
手紙...預かってるんだ。
思いもよらない出来事に、

私はただただ驚いた。

陸が私に宛てた手紙。

最後の手紙は、2文だけだったのに。

それだけだと思ってたのに...
翔吾
翔吾
明日持ってくよ。
翔吾
翔吾
それ見てもう一回ちゃんとあいつとも、
あなた自身ともしっかり向き合った方がいいよ。
翔吾さんはそう言うと、

「送って行くから乗って」

と私に言ってくれたけど、

なんだか私はまだここに居たくて、

それを見た翔吾さんは早く帰りなよ、

と優しく言って帰っていった。

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