診察を終えた彼女が病室に戻ってくると、
驚くと同時に不思議そうな顔をしてまだ彼女の病室にいた俺を見た。
一度は帰ろうと思ったけど、
やっぱりそんな簡単に彼女を放っておかなかった。
俺の中にはなぜか彼女を支えたいという感情が芽生えていた。
彼女は拍子抜けしたように目をぱちぱちと瞬かせて一瞬何が起きているのかと考えているようだった。
気づけば、
自分が言葉にできる精一杯の感情を彼女にぶつけていた。
本当に、心配だった。
そして彼女のそばに居たかった。
その時、彼女の瞳からキラキラと光るものが流れた。
驚いて言葉を失った。
彼女は自分でも泣いてることに気づいていなかったかのように驚いていた。
彼女の表情が少し曇ったように感じた。
何かまずいことをした気分になって帰ろうかと思った時だった。
彼女は本当に俺の言葉き嬉しかったみたいに優しく微笑んだ。
俺の中のいろんなものが崩れていくような音がした。
この人の笑顔をもっと見たい。
ずっと見ていたい。
ただ純粋にそう思った。
笑って少し細くなった彼女の瞳はとても温かく、優しく見えた。
そう言ってまた笑った彼女を抱きしめたい気持ちでいっぱいになりながら病室をあとにした。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。