第36話

☺︎
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2019/10/30 11:40
怖かったのは、

もうすでに彼の方を向いていた自分の気持ちを、

自分自身で認めてしまうことだった。
慎
嘘だろ...
そう小さく呟いて、

私がここにいることが、

彼の中にいることが信じられないみたいに彼は私の体を強く強く抱きしめた。
You
You
陸の代わりだと思ってた。
でも違ったの、私はずっと慎を好きになるのが怖かったの。
You
You
慎でいっぱいになって、大切なものが全部消えちゃうんじゃないかって思ったら怖かったの。
言いたいことで頭の中は溢れていて、

伝えたい事をまとめたはずなのに、

全部綺麗に言うことはできなくて。
You
You
でもそんなことないって分かった。
どんなに私が慎の事を好きになっても、大切なもの全部が消えるわけじゃない。
You
You
それにわたし...
ゆっくり慎から離れると、

初めて慎と出会った時のように慎は涙でいっぱいの目でわたしを見ていた。

何よりも輝く瞳でわたしを見ていた。
You
You
今は誰よりも慎を、
You
You
慎だけを大切にしたい。
彼の泣き顔が可愛くて、

愛おしくて、

大切で、

わたしはいつの間にか微笑んでいた。
You
You
私とまた付き合ってくれますか...?
冷たくなった耳が頬に触れて、

また笑みがこぼれる。
慎
本当に俺でいいの...?
You
You
慎がいいの。
私が言うとまた慎は
慎
嘘だろ、信じらんないよ...
と言いながら泣いていた。
慎
俺だけを見てくれるの?
You
You
慎だけを見たいの。
You
You
でも...彼のこと、私の心の中で大切にしててもいい?
わがままだと思った。

でも慎なら全部包み込んでくれると思った。

慎は私も、

私の大切な人も一緒に大切にしてくれる人だと思った。
慎
一緒に大切にするよ。
慎はそう言って私の瞳からこぼれた涙を指で優しく拭うと、

壊れ物を扱うかのようにそっと私にキスをした。
慎
大切にする。
慎は自分に言い聞かせるように、

私に約束するようにそう言った。

そして大きく深呼吸すると、とびっきりの笑顔になってまた私を抱きしめた。

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