どうせ、若菜ちゃんは颯太に好かれてるから?私が可哀想に思えるんだろうけど!!
私だって本気で颯太が好きなの……!!
口が止まらない。黒い感情が身体の奥底からどんどん溢れてくる。
……本当は、若菜ちゃんを責めるのは間違いだって分かってるのに……。
誰か、私を止めて――――!
ドキッ、と心臓が鳴った。
声を聞くだけでドキドキしてしまうほど大好きな人が、校舎の陰から現れる。
待っ……待って、嘘、私思いっきり告白してたんだけど!?
聞いてるんなら言ってよ……!あぁでも颯太がいるって分かってたら絶対本音言えなかったか……。
……もしかして、颯太は私が全部吐き出すまで待っててくれた?
颯太の口から改めて言われ、胸が締めつけられるように苦しくなる。
痛みを隠して、私は笑顔を見せた。
一番の、女友達。
記憶を失った颯太には、今日まで言われたことがなかった。――“今”の颯太が初めて、『私』を認めてくれた気がした。
……あーあ。なんか、それを聞けて私、満足って思っちゃってるな。
若菜ちゃんがベンチから立って颯太の手を握った。
颯太がそれに自然な動きで指を絡めて、しっかりと互いを繋ぐ。
その行為に勇気をもらったように、若菜ちゃんが言葉を続けた。
少しの、静寂。
颯太が私に向かって口を開いた。
……颯太って、わりとひどいよね。
見せつけるみたいに私の目の前で手なんか繋いじゃって、その上たたみかけるように「体が覚えてたのかも」って言うとかさ。
分かってたけど……勝ち目、ないなぁ。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。