第2話

lost.2
68
2018/04/01 15:06
ジリリリリとうるさい目覚まし時計を叩いて止める。
ベッドから起き上がり、ぼんやりと辺りを眺めてここが現実だと分かると、口から乾いた笑いが零れた。
……颯太が記憶喪失になったって聞いても、普通に寝れるところが私だよね。
侑亜
学校行こ……


□■□

陽菜
おはよー!
侑亜
おはよう
陽菜
ねぇ聞いた!?宮川(みやかわ)くん記憶喪失になったんだって!
鞄を床に下ろして席に着く私を振り返り、友達の陽菜(ひな)が前の席から一番聞きたくないことを話してきた。
「知ってる」、そう短く答えて口を閉ざす。
陽菜
あ、やっぱり?もうびっくりじゃない!?記憶喪失とか本当にあるんだって感じ!
それなら記憶戻す方法もあれか、何かショックを与えたり、同じような事をしたりするんだよね!戻らないこともあるらしいけど、戻らなかったらちょっと嫌だよねー。特に侑はさ
最後だけ、ひそっと小声で付け加える陽菜。陽菜は私の秘密を知っているのだ。
中学生の頃から一番の男友達である颯太を、私がずっと好きだって秘密を。

……私はまだ、颯太と話してない。どこまで記憶を失くしたのか颯太のお母さんに聞けなかったけど、もしかしたら私のことは憶えてるかもしれない。
侑亜
まぁ大丈夫でしょ。颯太が来るの待と
陽菜
そうだねー……っと、噂をすれば
開かれた教室の扉から、骨折した左腕を首から吊った颯太が入ってきた。
骨折を除きいつもと変わらないその姿に安心し、私はいつものように駆け寄って声をかけた。
侑亜
おはよう颯太!今日も寝ぐせついてるね
笑って、颯太の髪の寝ぐせを直そうと手を伸ばす。

――パシッ、と音がして、次に伸ばした手に僅かな痛みが走った。
颯太
……誰?
警戒心を宿した目で睨むように見下ろされ、私は言葉を失った。
――颯太に手を振り払われた。誰って何?私のこと忘れてるの?私、颯太の一番仲良い女友達だよ?

……待って……じゃあ、まさか……“あの子”のことも?

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