躊躇った様な顔を見せたあと ,
スニョンさんは
顔を下げてそう言った .
彼は私に本音を呟いた後 ,
控えめな声でそう続けた .
私と彼の目が
合うことは無いけれど
それは本当に悲しげで
なんだかいたたまれない気持ちになる .
スニョンさんは悔しそうに
ギュッと手を握って続けた .
スニョンさんは私と目線を合わせて
きゅっと唇を結んだ .
瞳の表面に張った涙の膜が
どうも私の胸を締め付ける .
彼の話を聞いて ,
いや , 聞かずとも
彼の態度は普通だと思っていたから
謝られると思っていなくて
少し理解が追いつかなかった .
スニョンさんが頭を上げたあと
今度は私が頭を下げる .
今しかないって , 俺にはこれしかないって
ずっとあんなに言っていたのに
私がいるせいで負担や不満を
増やしてしまっていたのだから
頭を下げるのは最初からこちらの方だ .
少し唇を突き出して
そういう彼は
練習室で威張っていた時より
年相応の年下の男の子 , って雰囲気が
溢れ出ているように見えて
なんだか微笑ましかった .
頬をかいてバツが悪そうに
言うスニョンさんに
少し頬が緩む感覚がした .
そう返せば
少し驚いたように目を見開いたあと ,
嬉しそうに笑っては
そう言って思い切り手を出した .
私はその手をぎゅっと握っては
と答えた .
スニョンさんが頭を冷やしたからなのか
一緒に頑張ると言ってくれて
とても嬉しかった .
きっと彼の邪魔をしているだろうし
目標を達成する道を
私が通せんぼしてしまうかもしれない .
でも , 少しでもそうなる未来を
彼らの負担を , 減らせるように
私に出来る範囲の努力を
し続けようと思った .
スニョンさんと別れたあと
私は練習室に戻って
練習を続けようと力を入れ直した .
そんな時 ,
音楽プレイヤーの隣に
チョコレートと付箋が置いてあった .
It’s okay
そこに書かれていたのは
本当に短い文だったのに
底知れないほどの勇気をくれるようで
この先の未来なんて見えないのに
どこか凄く安心した .
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。