第67話

 過去のこと ⑩ 
4,131
2022/10/30 09:00





 HOSHI 
 HOSHI 
 本当は , 嫌です  





   躊躇った様な顔を見せたあと ,

   スニョンさんは

   顔を下げてそう言った .




   
 HOSHI 
 HOSHI 
 俺 , 小さい頃に
 実家を失くしたんです 




   彼は私に本音を呟いた後 ,

   控えめな声でそう続けた .



 HOSHI 
 HOSHI 
 父さんが事業者だったんだけど , 
 経営が傾いちゃって
 HOSHI 
 HOSHI 
 実家を手放すしか無かったから . 




   私と彼の目が

   合うことは無いけれど


   それは本当に悲しげで

   なんだかいたたまれない気持ちになる .




 HOSHI 
 HOSHI 
 その実家俺も大好きで , 
 もう1回住みたくて ,
 HOSHI 
 HOSHI 
 もし , 成功したら 
 その実家を買い直すって
 初めから決めてるんです 
 HOSHI 
 HOSHI 
 でも俺 , 特別顔がいいとか 
 特別才能があるとか
 HOSHI 
 HOSHI 
 そんな凄い人間じゃないから 




   スニョンさんは悔しそうに

   ギュッと手を握って続けた .




 HOSHI 
 HOSHI 
 掴んだチャンスを
 無駄にしたくなかったんだ 
 HOSHI 
 HOSHI 
 一回失敗したとして
 またチャンスが回ってくるとは 
 到底思えないし ,
 HOSHI 
 HOSHI 
 それなら今頑張るしかなくて ,
 邪魔されたくないからって
 あんな酷いこと沢山言いました 




   スニョンさんは私と目線を合わせて

   きゅっと唇を結んだ .




   瞳の表面に張った涙の膜が

   どうも私の胸を締め付ける .




 HOSHI 
 HOSHI 
 身勝手だった 
 HOSHI 
 HOSHI 
 ごめんなさい 





   彼の話を聞いて ,

   いや , 聞かずとも


   彼の態度は普通だと思っていたから

   謝られると思っていなくて

   少し理解が追いつかなかった .




   
 ME 
 え , いやっ … 頭あげてください , !! 
 ME 
 スニョンさん悪くないです 
 ME 
 私が重荷になってしまって 
 本当にごめんなさい




   スニョンさんが頭を上げたあと

   今度は私が頭を下げる .



   今しかないって , 俺にはこれしかないって


   ずっとあんなに言っていたのに

   私がいるせいで負担や不満を

   増やしてしまっていたのだから

   頭を下げるのは最初からこちらの方だ .





 HOSHI 
 HOSHI 
 俺の事 , 恨まないの? 
 ME 
 だって悪いの私ですし … 
 HOSHI 
 HOSHI 
 … お人好し 





   少し唇を突き出して

   そういう彼は


   練習室で威張っていた時より

   年相応の年下の男の子 , って雰囲気が

   溢れ出ているように見えて

   なんだか微笑ましかった .




 HOSHI 
 HOSHI 
 女なんか ~ って思ったけど … 
 ちゃんと話してみて ,
 今はなんか違う気がします 
 HOSHI 
 HOSHI 
 一緒に頑張りたいです 
 HOSHI 
 HOSHI 
 こんなの , …
 都合良すぎますかね , ?? ㅎ 




   頬をかいてバツが悪そうに

   言うスニョンさんに


   少し頬が緩む感覚がした .




 ME 
 よ , よくなんかないですっ 




   そう返せば

   少し驚いたように目を見開いたあと ,

   嬉しそうに笑っては




 HOSHI 
 HOSHI 
 じゃあっ , 良かったら
 これから仲良くしてください … !! 




   そう言って思い切り手を出した .





   私はその手をぎゅっと握っては




 ME 
 はいっ!もちろんです! 




   と答えた .




   スニョンさんが頭を冷やしたからなのか

   一緒に頑張ると言ってくれて

   とても嬉しかった .




   きっと彼の邪魔をしているだろうし

   目標を達成する道を

   私が通せんぼしてしまうかもしれない .





   でも , 少しでもそうなる未来を

   彼らの負担を , 減らせるように

   私に出来る範囲の努力を

   し続けようと思った .





 ME 
 よしっ … 頑張ろう , !! 




   スニョンさんと別れたあと

   私は練習室に戻って

   練習を続けようと力を入れ直した .




 ME 
 あれ , これ … 




   そんな時 ,

   音楽プレイヤーの隣に

   チョコレートと付箋が置いてあった .







          It’s okay もう大丈夫




   そこに書かれていたのは

   本当に短い文だったのに


 
   底知れないほどの勇気をくれるようで

   この先の未来なんて見えないのに

   どこか凄く安心した .




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