頭を冷やしてこい , と
スンチョリヒョンに ,
初めて練習室を追い出された .
全部自分が正しいと思ってた .
夢を追って , 無我夢中で走って ,
着いて来れないなら辞めればいいなんて
自分の邪魔をする全てを
強く憎んでいた .
冷たい水を開けて ,
喉に流し込んでいく .
今思い返せば ,
ジフナにあんなに酷いこと言って
何の為になるのか ,
考えれば考えるほど
何も見当たらなかった .
ストレスやイライラが
溜まっていたのは紛れもない事実 .
あの人が原因なのも , 事実 .
一人になるとその人へのイライラが
募りに募って ,
練習室でそれが発散されてしまう .
みんなに迷惑かけているのは
分かってはいるんだけど ,
どうも態度に出てしまう .
生き急いで先走った分
ままならないままの振りもあるから
再確認して練習を重ねたかったのに .
したい時にできないストレスも
なんだか重なってくる気がした .
どれもこれも仕方ないこと , と言われれば
それまでの内容なんだけれど .
宿舎でドタドタ練習してやろうかな ,
練習室の扉の前でため息をついた時 ,
ゴン , と鈍い音がして
それと同時くらいに俺の額に
ガツンとした痛みが走る .
分厚めの扉から覗く彼女は
初めて見た時より小さく見えた .
手をアワアワさせては
額を抑える俺を心配してくれる彼女 .
分厚い扉がバタン , と
重い鳴らせて閉じるのと同時に
自分の中の何かが解けた気がした .
それは今まで威張ったように
偉そうな態度をとる自分に
呆れたような , 乾いた笑いだった .
目の前で心底驚いたように
間抜けな顔をするものだから
なんか自分のあほらしさを
写しているように見えた .
今までの強い口調とは違って
なるべく柔らかく声を出す .
この人を怖がらせないようになんて
今更感溢れるようなことを思いながら .
安堵の笑みを見せた彼女 .
自分が思っているより
その人はもっともっと脆そうで
壊れてしまいそうだった .
笑顔もどこか , 可愛らしいのに
力無いように見えて
自分の不甲斐なさにとても落胆した .
彼女は俺との間に流れた沈黙を
破るかのように言葉を紡ぎ出した .
その言葉はどこか俺を抉るようで
今までの行いを余計思い返してしまう .
そのせいか ,
俺は申し訳なさそうに笑う彼女に
なんて返したらいいのか分からなかった .
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。