第66話

 過去のこと ⑨ 
4,331
2022/10/29 11:00





   頭を冷やしてこい , と

   スンチョリヒョンに ,

   初めて練習室を追い出された .





   全部自分が正しいと思ってた .


   夢を追って , 無我夢中で走って ,

   着いて来れないなら辞めればいいなんて

   自分の邪魔をする全てを

   強く憎んでいた .




   冷たい水を開けて ,

   喉に流し込んでいく .





   今思い返せば ,

   ジフナにあんなに酷いこと言って

   何の為になるのか ,



   考えれば考えるほど

   何も見当たらなかった .






 HOSHI 
 はぁ … 




   ストレスやイライラが

   溜まっていたのは紛れもない事実 .



   あの人が原因なのも , 事実 .




   一人になるとその人へのイライラが

   募りに募って ,

   練習室でそれが発散されてしまう .


   みんなに迷惑かけているのは

   分かってはいるんだけど ,




   どうも態度に出てしまう .





 HOSHI 
 また誰か使ってるし , … 




   生き急いで先走った分

   ままならないままの振りもあるから


   再確認して練習を重ねたかったのに .





   したい時にできないストレスも

   なんだか重なってくる気がした .



   どれもこれも仕方ないこと , と言われれば

   それまでの内容なんだけれど .







 HOSHI 
 はぁ … 諦めるしか … 





   宿舎でドタドタ練習してやろうかな ,



   練習室の扉の前でため息をついた時 ,

   ゴン , と鈍い音がして

   それと同時くらいに俺の額に

   ガツンとした痛みが走る .






 YOU 
 あっ , すにょんさん … !! 





   分厚めの扉から覗く彼女は

   初めて見た時より小さく見えた .




 YOU 
 ごめんなさい … ごめんなさい … っ 





   手をアワアワさせては

   額を抑える俺を心配してくれる彼女 .



   分厚い扉がバタン , と

   重い鳴らせて閉じるのと同時に

   自分の中の何かが解けた気がした .




 HOSHI 
 … ははっ , 




   それは今まで威張ったように

   偉そうな態度をとる自分に

   呆れたような , 乾いた笑いだった .





 YOU 
 … 




   目の前で心底驚いたように

   間抜けな顔をするものだから



   なんか自分のあほらしさを

   写しているように見えた .




 HOSHI 
 大丈夫ですよ 




   今までの強い口調とは違って

   なるべく柔らかく声を出す .




   この人を怖がらせないようになんて

   今更感溢れるようなことを思いながら .





 YOU 
 良かった , です … 




   安堵の笑みを見せた彼女 .



   自分が思っているより

   その人はもっともっと脆そうで

   壊れてしまいそうだった .



   笑顔もどこか , 可愛らしいのに

   力無いように見えて




   自分の不甲斐なさにとても落胆した .




 YOU 
 ごめんなさい ,
 本当は私がいるの嫌ですよね , 




   彼女は俺との間に流れた沈黙を

   破るかのように言葉を紡ぎ出した .



   その言葉はどこか俺を抉るようで

   今までの行いを余計思い返してしまう .





   そのせいか ,

   俺は申し訳なさそうに笑う彼女に

   なんて返したらいいのか分からなかった .





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