今でも取っておいてある ,
昔使っていた手帳 .
その手帳に日記を書くようにしていて
今日は誰と話したとか
今日は何を練習したとか
今日は誰とぶつかったとか
色んなことを記入してある .
見ると苦い思い出も蘇るけれど
それがないと今がないのだと思えば
甘い思い出なのかもしれない .
あの時から謎だったこの付箋 .
貰った付箋は全てこの日記に ,
あれからずっと貼って取っておいてある .
今の今まで本当に誰だかわからないまま
デビューして , ありがたくも売れて
なんてことが起きている .
… お礼 ,言いたいのにな
後ろから突然やってきたハニが
覗き込むようにしてそう声をかける .
うぇ ~ , と苦虫を噛み潰したような声を
出すハニについ笑みがこぼれる .
確かに思い出したら嫌な思い出だけど
私はとても大切な思い出だと思う .
私たちが手帳を見ているところに
お馴染みのふたりがやってくる .
この同い年メンツがいたから
ここまでやりきってこれたって言うのも
ひとつのことなんだろうな .
そう言ってスンチョルが手に取った付箋 .
何かと気分が落ちている時に貰っていて
励ましだったのにも関わらず
ある日からパタンと途絶えちゃって
久しぶりに送られてきたのが
ホシと話せるようになった時の
ものだったんだよね
それが最後だったんだけど .
スンチョルの質問に対して
ふわりと笑って答える .
見ただけでも
あの頃の過酷さと大変さが蘇る .
それも全部補ってくれてたのは
この付箋やドギョマたちだ .
本人にしか分からないから , と返すシュア
励ましてくれてたってことは
私の事を応援してくれてたのだろう .
私が今こうしてテレビとかメディアに
映っているのを見て
笑ってくれてるだろうか .
この活動がこの人への恩返しにも
なっていればいいんだけど …
パタン , と思い出の手帳を閉じて
すっと立ち上がる .
後ろに横並びに立つ3人は
昔と変わっているようで
あまり変わっていなくて
つい笑みがこぼれてしまう .
楽しそうな笑い声が宿舎の部屋に反響する .
そんな声につられて
メンバーたちがぞろぞろと揃い出す .
私の周りに13人の男の子 .
最初に入った練習室に居た皆とは
打って変わった表情の彼らが
今そこにいて , 私の仲間であることに
物凄い感動を , 今更ながらに実感した .
普通に生活していたら
繋がらなかったはずの縁だから ,
これからも大切にしていきたい .
なんて 変な願い事を心で唱えて
みんなに " ご飯を食べよう " と
ごく普通の呼び掛けをした .
それに応えてくれたみんなの笑顔は
宝物のように輝いていた .
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。