今回の話は前回の続きとなります。



前回の注意事項を踏まえた上でご覧下さい。

暗い。






寒い。






ぶくぶくと耳に泡が弾ける音だけが聞こえ、脳に響いている。








……───ここは、







どこ───？

視界が緑色に染まってぼやけている。






自分がさっきまで何をしていたか、どこにいたか分からない。




体を動かそうとするが、動かない。





力を振り絞って視界を揺らがせた。

白い服を身にまとっていて宙に浮いている。






視界がみどりに見えるのは緑の液体の中にいるからだろう。




口には機械に繋がっているチューブが取り受けられていて、ぶくぶくと泡が漏れ出していた。

ぼやけた視界の奥に誰かが見える。





何人もの白い服を着た人たち。




……白衣か。




こちらをチラチラとみながら何かを記録しているのか？

力を振り絞って何とか手を前に伸ばす。





すると硬いガラスのようなものに触れ、直ぐに手が前に進むのを止める。




……閉じ込められている？

何も分からない。





一体、何が起きているのだろう───？

ふと目が覚めて、いつも通りのクリアな視界に戻る。





あれから記憶が無い。





いや、覚えてない。





目覚めると足枷をつけられたまま椅子らしき機械に座らされていた。

部屋には誰もいなくて正面にあるドアから少しだけ声が漏れていた。

孤児院の子……もしかして僕？





薬が効いてる……ってことは何がを打たれた……？

混乱しているとドアががちゃりと開いて、外から僕を引取りに来た女の人と、博士？と呼ばれていたであろう男が入ってきた。

そう言って女の人は白衣のポケットから注射器を取り出す。







それを見てわかったのは自分にとって害を与えると言うものだ。




これは本能的な勘だ。

そう言いながらどんどん近づいてくる女。






怖い。







怖い。

ﾌﾞｽｯ!!!!!!

鈍い音を立てて、痩せ細った腕に針が突き刺さる。

そして身体中にその液体が巡らされる。

全身がズキズキと痛んで動かない。

急に声を荒げて大喜びする。




……何が起きているかも分からないまま体には少しの痺れが残っている。

僕に向かって言葉を発したかと思えばよく分からないことを言い始める。






……毒が効かない……？






なんでそんなことに……

正直頭が狂ってると思ったし喜びもなかった。





こうやって子供を実験体にして勝手に改造されて、毒を刺されて。




下手したら死んでた。





なんで人の命を軽く見ているのだろう？




怒りが込み上げてきた。

何言ってんの？





そう頭によぎった。




狂っている。





こいつらは。

数週間後。

もう何も感じなくなっていた。






毒を投与されても、実験体にされても。





あれから何度も繰り返されてきたから。

歯を強く食いしばって、苦しみと何も出来ない惨めな自分にへの怒りをこらえる。







なんで僕がこんな目に会わなきゃ行けないのだろう。





僕はただ、優しい人に引き取られて、温かいご飯を食べながら楽しく会話が出来ればそれで良かったのに。




冷たく冷えきった栄養重視の美味しくないご飯。




会話なんかままならない実験狂の奴ら。

もう全部が嫌になる、まるで、僕が僕じゃないのかのように、全て、全部、信じるものがない…！！

その時。

ﾄﾞｶｧｧｧｧｧｱｰｰﾝ!!!!!!!!!

そうして僕を置いたまま立ち去ろうとする。





……僕ってこいつらにとって大事な実験体じゃないの？？




毒が効かないんだよ？？




……捨て駒だったの？

ﾄﾞｶｧｧｧｧｧｱｰｰﾝ!!!






もう1回。今度は近くで爆発音がなる。

目の前を見るとドアが破壊されていて、煙がたっていた……

いかつそうな人が銃を持って、どんどん近くに近づいてくる。

なんの会話をしているのだろう？





全く理解が追いつかない。

そう言って引き金を引いた。

ﾄﾞﾝｯｯｯｯ!!!!!!

目の前で人が打たれる。

 






打たれたあと倒れてうごかなくなり、赤い血が広がる。

そして容赦なく引き金を引く。







ﾄﾞﾝｯｯｯｯ!!!!!!

話しかけられてびっくりする。






……打たれる、？

そう言って注射器を取り出す。

ﾌﾞｽｯ!!!!!!

しばらくしてこちらに問いかけてくる。

そう言って彼は驚いた表情をした。





……どうせなら毒で死にたかった。




打たれて苦しみながらは嫌なのに。

急に話しかけられて、びっくりしている僕の足枷を外しておんぶする。

そう。これが僕と5人とが出会うきっかけだった。

《名前 稲荷ほとけ当時12歳》




《我々組織の薬の流出先にて被検体にされていた様子。どうやら薬が効いているらしく毒の無効に成功している。薬の成功者としてこれから様子を見ながらリハビリを続けていく予定》



《記入者：〇〇》