家から出てきた人は、一言でいうとイケメンだった。整った端正な顔立ちに、紫色の髪。背は高く、瞳は釣り上がっているように見えるが、そこがクールを演出している。まぁ、一言でいうと女の子にモテそう。
つまり、あたしの敵だ。だけど、いきなり敵意をむき出しにするのも失礼。あたしにだって、それぐらいの常識はある。それに、これから居候させてもらうんだから、はじめの印象は大切だ。
一応敵意を向けないように気を付けながら挨拶をする。そして、お辞儀。
……思ったよりも、案外丁寧な対応だった。聞いていないとか言われるのかと思って軽くビビっていた。
そして、話していてわかったこと。この人はきっと見た目通りクール系のイケメンだ。クソッ、憎い……。あたしだって男だったらそこそこモテただろうに……。
なんて叶わないことを思いながら、椿原家にお邪魔する。中は案外綺麗で、まっすぐ廊下を進むと、あったのはリビングらしき部屋。
出されたのは、確かにおしゃれとは程遠い麦茶だった。まぁ、あたし的にはありがたいのだけれど。
そして、階段を駆け上がる音が聞こえる。きっとさっき言っていた兄と弟を呼びに行ったのだろう。あ、つまり彼は次男か。
今は六月の下旬。外はもう暑いし、お茶が八割増しぐらいでおいしく感じられる。いやはや、麦茶は神様ですね~。
そんなことを思っていると、階段を下りてくる音が約三人分。きっと、さっき言っていた兄弟だろう。その後、リビングと思わしくこの部屋の扉が勢いよく開いた。
そう言った次男さんが連れてきたのは……少し長めの髪をした見た目俺様系のイケメンと、とても可愛らしい男の子だった――。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!