そこまで言って透さんは頭を下げてきた。
そして……。
そう、言ったのだ。
そう言ってくる透さんにあたしはどう反応したらいいのかわからなかった。あたしにだって友達と呼べるのは梨央と桃しかいない。だけど、二人はとても大事で大切な友人で親友だ。それに、梨央たちと一緒に居ると時間を忘れるぐらい楽しい。
友達って言うのは、親友って言うのは、少なくても信頼できる人がいればいいと思う。だけど、でも、仕方がない。しばらく一緒に暮らすんだから、友達にぐらいはなってもいいのかもしれない。それに、とりあえず頭を上げてもらわなくちゃ。
本当は、異性が苦手なあたしは仲良くなんてしたくなかった。でも、ここまで言われたら少しぐらいは仲良くしないといけないんだってことぐらい、分かる。短くても三ヶ月は彼らと一緒に暮らしていくのだから。だから、少しだけ彼らに近づいてみよう。……あたしは同年代の男子が嫌い。というか、怖いのだ。……あの人以外は。
昔のことを思い出してしまうのが、怖かった。大切なものを壊された記憶が、蘇る。
でも……少しだけ、頑張ってみようかな……。
あたしがそう思った時だった。
隣の部屋、つまり駿君の部屋から大きな物音がしたのは――。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。