それは、大きな物音だった。まるで、タンスとかクローゼットとか。そう言った大きなものが倒れたような音。それを聞いてか、透さんは遠い目をしたあと、静かにため息をついた。
いやいや、そんなことを言われましても! めちゃくちゃ気になりますからね⁉ だって、あの物音からしたら絶対に何か壊れたでしょ⁉ それがガラスとかに当たってガラスが割れたりしたら怪我もしちゃうし、防犯上も良くないでしょう⁉
そういって少し俯く透さんの表情は、すごく悲しそうだった。そりゃそうだろう。家族に嫌われるって、あたしにはよくわかんないけれど、辛いと思う。あたしだって、お母さんに嫌われたら辛いし、そもそも生きていけない。
同い年ぐらいの男子は怖い。でも、このままだったら間違いなく駿君に良くない。
初対面で「殺す気はない?」的なことを言われたけれど、それでもこれから一緒に住むんだ。怖くても、我慢しないと。
あたしは透さんを一人部屋に残して、隣の部屋に向かった。
なんて、一人部屋に残された透さんが言っていたのは、知らない。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。