お母さんが死んでから、どれくらい経ったのだろう。
気づけば、自分の部屋のベットに寝転んでいた。
お母さんの葬儀も終わり、孤独を噛み締めていた。
なんだか、1人になった気分。
ずっと、大好きなお母さんだった。
私が「おはよう」って言ったら笑顔で「おはよう」って言ってくれた。
甘いもの食べながら、一緒に「美味しいね」って言い合った。
雨上がりにお母さんと見た虹はすごく綺麗で。
一緒に本屋さんに行って、上野公園に行って、明治神宮に行って。
そういえば、内緒でお兄ちゃんのバレーも見に行ったな。
守りの音駒でリベロを務めるお兄ちゃんは、やっぱりかっこよくて。
家族で出かけたすいぞくかんはとても綺麗で。
なにもかもが、儚い思い出になっていく。
ついこの間まで話していたのに。
手を触れていたのに。
今は、話すことさえできない。
その呆気なさに、戸惑いもあった。
でも同時に、怖くもあった。
今は、お兄ちゃんがいて、お父さんがいて、研磨がいて、烏野のバレー部があって。
当たり前のような幸せは、呆気なく散ってしまうのだと。
改めて思い知らされた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。