第50話

気持ち
1,033
2021/06/22 21:00



お母さんが死んでから、どれくらい経ったのだろう。








気づけば、自分の部屋のベットに寝転んでいた。








お母さんの葬儀も終わり、孤独を噛み締めていた。






なんだか、1人になった気分。







ずっと、大好きなお母さんだった。








私が「おはよう」って言ったら笑顔で「おはよう」って言ってくれた。









甘いもの食べながら、一緒に「美味しいね」って言い合った。









雨上がりにお母さんと見た虹はすごく綺麗で。







一緒に本屋さんに行って、上野公園に行って、明治神宮に行って。







そういえば、内緒でお兄ちゃんのバレーも見に行ったな。








守りの音駒でリベロを務めるお兄ちゃんは、やっぱりかっこよくて。









家族で出かけたすいぞくかんはとても綺麗で。












なにもかもが、儚い思い出になっていく。









ついこの間まで話していたのに。






手を触れていたのに。







今は、話すことさえできない。











その呆気なさに、戸惑いもあった。








でも同時に、怖くもあった。









今は、お兄ちゃんがいて、お父さんがいて、研磨がいて、烏野のバレー部があって。







当たり前のような幸せは、呆気なく散ってしまうのだと。












改めて思い知らされた。

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