前の話
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夢幻町という場所がある。
この地域で囁かれてる、ちょっとしたウワサ話。
「美しく、儚げで、不思議な。夢のようで幻の。そんな町が夢幻町なんだ。行ける人は限られてるんだ。」
地図にもどこにも書いていない。
誰も見たことも言ったこともない。
美しく、儚い、不思議で、夢のようで、幻の物語。
「ねぇ、知ってる?」
この世界にはいくつもの罪とか嘘とか、人間の“黒いとこ”が散りばめられてて。それを知ってる僕らもまた、黒いんだって。
でも、そんなの嘘っぱちだ。だって僕は知らないから。人間の黒いとこ、見たことないから。
本当に綺麗な人は、黒いとこを他の色にしてしまうんだって。塗り替えてしまうんだ。
塗り替えるのに、隠すわけじゃないって。お母さんが言ってた。
この小さな小さな町では、みんな友達。みんな家族。
仲良しこよし。
あぁ、鴉が鳴いてらぁ。
帰らなきゃ。
怒られちゃう。
夢幻町があるらしい。この道の先にあるらしい。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!