第31話

君のいない世界
28
2021/01/07 14:19
あれから一二週間経った
心詩
行ってきます。
その言葉を言っても帰ってくる言葉はない。
いつもなら、雪に会いに行ってから学校に行っている
でも雪は......
心詩
ッ......
あんなこと言ったけど全然吹っ切れてなんていないッ
雪の家の前を通ると
ガチャッ
お母さん
心詩くん
心詩
おばさん...
お母さん
お誕生日おめでとう。
心詩
えっ...?
今日って.........俺の誕生日だったんだ......
お母さん
帰りによってくれるかしら?
心詩
はい...
お母さん
心詩くんしっかり寝てる?
心詩
......あまり。
お母さん
体に毒だから気をつけてね。
心詩
はい。
お母さん
たまには、お線香もあげに来て欲しいな。雪も寂しがると思うから
心詩
まだ、......無理なんです......
お墓参りもお線香もあげられていない
お母さん
そう......
お母さん
落ち着いたら、お願いねニコッ
心詩
はい。
おばさんに別れを告げ通学路を歩いていく
そうしていたらこんな話が聞こえた
男子
新谷また退学したらしいぜ〜
男子
マジで?一日でギブかよ〜いじめたりねーよ
男子
また金貰いに行く?w
男子
いいね〜
ふざけんなッ...ふざけんなっ!
心詩
お前ふざけんな!
思いっきり相手の胸ぐらを掴む
男子
はっ?!なんだよ!
男子
お前キモイんだよ!あんな障害者と関わって!
心詩
雪は障害者じゃねぇよ!
「僕にどんなことがあっても感情のままに動かないで」
どこから聞こえ、掴んでいた腕を離した。
男子
な、なんなんだよ!
男子達はすぐに立ち去って行った
心詩
ヒクッ......雪ッ...
その場に座り込む
心詩
無理だよ俺っ
心詩
雪がいない世界でなんて生きていけないっ
心詩
無理だよッ...
心詩
雪ッ...ゆきっ......!
会いたい...会いたいよ。
こんなに最悪な誕生日はなかった......
心詩
学校......行く気になれないや......
心詩
家に帰ろ......











--------キリトリ線--------
こうちゃん!お誕生日おめでとう!
心詩
ありがとニコッ
僕外に出られないから、お母さんに買ってきて貰ったけどプレゼント
心詩
文房具セットか
何あげたらいいかわかんないから
心詩
嬉しいよたくさん使うニコッ
ありがとうニコッ
今ケーキ持ってくるねニコッ
心詩
うん
ケーキを落とさないようにと持ってくる雪
はい!
今年はチョコケーキ!
またお母さんに手伝って貰っちゃった
心詩
美味しそう
丁寧に切り分ける雪
どーぞ
心詩
いただきます
心詩
んっ...美味しい!
良かったぁ...
じゃ、僕もいただきます!










--------キリトリ線--------
心詩
ん.........
心詩
寝てた.........
おもむろにスマホの電源を付けてフォルダーを開く
そして1枚1枚写真を見ていく
1番上にあった最後の雪との写真
心詩
ッ......
高校の入学式の日学校の校門でおばさんに撮ってもらったんだ
次にあった写真は中学卒業の時のクラスでの集合写真だった
でもそこには雪の姿はなかった
何故なら、雪は入らずに撮る側に回されたから。
それでも、心良く受け入れて撮ったのだ
その時の雪の顔はとても、悲しそうだった。
心詩
ごめんねっ......
いつもいつも雪に我慢させちゃう
ガチャ
心詩
まさか......雪が...
雪がッ...来てくれたッ...
急いで玄関に行くけれど思い描いていた人物とは違った
心詩の母
何よ
心詩
な、なんでも......
また部屋に戻ろうとすると
心詩の母
あんたの友達死んだってね
心詩
ッ.........
心詩の母
可哀想に
心詩
何が可哀想だよ!
心詩
なんで帰ってきたんだよ!
心詩の母
何よ久しぶりに帰ってきてやったのに
心詩
出てけよ!
パシッ!
心詩
いっ......
叩かれた......
コイツに叩く権利なんてないのに
心詩の母
親になんて言う口効いてんのよ!
心詩
ッ......
心詩
別に
ガチャ
心詩の父
ただいま
心詩
お父さん...?
お父さんの手にはケーキが入っているであろう箱が握られていた
心詩の父
今日心詩の誕生日だろ?だからお母さんも呼んだんだよ
心詩
ぇ.........
心詩の母
なのにコイツ私の事
心詩の父
まぁまぁ
どうして......
今までこんな事なかった.........
心詩の父
ほらケーキ食べよ
心詩
うん...
心詩の父
お母さん何飲む?
心詩の母
ワイン











--------キリトリ線--------
心詩の母
あ〜......心詩ァ...
心詩の母
雪くんがねぇ......死んじゃったからってねぇ......そんなクヨクヨしてても.........雪くんが申し訳なくなるだけじゃないぃ............
心詩
ぇ......
心詩の母
あたしトイレ行ってくる〜......
心詩の父
あれは完璧に酔ってるな
心詩の父
心詩、心詩の中のお母さんは最悪な人かもしれないけどね
心詩の父
お母さんは雪くんと同じぐらい優しい人なんだよ
心詩の父
きっと酷いこと言ってると思う。でもね、お母さんは自分の気持をちゃんと言葉にできないだけ
心詩の父
いわゆるツンデレなんだよ。本当は誰よりも心詩の事が心配で心配で毎日電話してくるぐらい
心詩
そう、だったの...ッ?
心詩の父
うん、
心詩
俺ッお母さんに酷いことッ...
心詩の父
お母さんは医者になってから誰も死なせた事はないよ。
心詩の父
1人の患者さんが治ったら直ぐに他の患者さんに取り掛かって、助けるために徹夜して病院に寝泊まりしてる
心詩
お母さんってそんなにすごいんだ......
ガチャ
心詩の母
もっと飲むわよ〜次ビール〜
心詩の父
酔ったらあんな感じだけどねニコッ
心詩
あははッ
フニッ
心詩の母
やっと笑ったァ〜
心詩の母
うへへへ
心詩の父
ハイハイもう寝ようね〜
俺がただ誤解してただけなんだ。
もしかしたら、俺が寂しくならないように雪が導いてたりして......
心詩
あ、おばさんの所に行かなきゃ行けなかったんだ...!

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