眠ってる雪に話しかけても返事なんて来ない
日に日に痩せていく雪にだんだんと不安がつもりにつもる
しばらく髪を切っていない雪は知らない人が見たら女の子に見えるんだろう。
やっぱり反応はない
萎れかけている花を花瓶から抜き水を取替えチューリップを入れる
微かにその声は聞こえた
俺が雪の方に向くとニッコリと微笑んでくれた
雪に付いていた酸素マスクを雪が外しゆっくり起き上がる
弱く笑う雪は消えそうだった
スッと雪が手を出す
ギュッと握る
俺の手を握り返してくれる雪の力は弱々しくて手を繋いでる感覚は無かった
ガラガラッ
酷く傷ついた顔をした
当たり前だよね。外に出られるようになったのに、足が動かないなんて
医者が俺の方を見る。きっと名前がわかんないんだろう
ギュッと必死に掴んでる雪が少し可愛く見えた
やっぱり力は弱いから落ちないように背中を支える
ゆっくりと座らせる
その笑顔は引きつってた
--------キリトリ線--------
あれから診察が終わって病室
僕とこうちゃんの間には沈黙が流れてる
言わなきゃ、言わなきゃ
何か特別あった訳じゃない。ただ、起きたら記憶が戻ってただけ...
ギュッ
ガラガラ
ベットから降りようとするけれど動かない足。
上半身だけが動いたからベットから落ちそうになる
自分の動かない足に少し苛立ちを覚える
そんなに顔に出てたのかな...
気をつけなきゃ...
ガラガラ
それから3日後雪は退院した
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。