第53話
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「ごめんね。期待外れで。」
それが最後の会話
この言葉が頭から離れない
期待外れなんかじゃない。そもそも期待ってなに
俺はあなたがよくて、それ以上でも以下でもなかった
あなたっていう存在が好きだったのに
その後あなたはスーツケースに自分の洋服やら化粧道具やら必要そうなものを詰め込んで出て行った
友達の家にでも泊まってしばらくしたら帰ってくるんだろうな
そう思ってたけど5日経っても帰ってこなかった
ほとんど何も変わってない部屋なのになんとなく寂しいのはきっとあなたが居ないからで
居なくなってから気づくなんて遅すぎるのも分かってるし素直に謝ればよかったって思った
あなたが出て行ってから2週間
本当に帰ってこないんだと思って俺も家を出た
朝起きて、横を向けば同じベッドに居た彼女が居ない
俺の洗濯物も食事も何から何までやってくれてた彼女
俺の生活に欠かせない存在だったことがこの家にいると嫌という程痛感させられる
日に日にそれが辛くなって、どうしようも無い自己嫌悪に襲われるし
だからかタバコの本数も増えた気がする
元々の家具はあなたが揃えたやつだから俺の荷物はそれこそスーツケースに収まった
手を繋いで横を歩いてくれる人がいない外は寒かった。