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第55話

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842
2021/11/25 11:30




健太が居なくなっちゃってから1週間。

皮肉にも今日のMステにRAMPAGEが出る

別に、気にしてるとかじゃないし

そう意地を張りつつチラチラと時計を確認してる自分にため息が出る

時間になればリモコンに手が伸びるし、健太が一瞬でも映らないかって画面を必死になって見つめた

全員で挨拶をするところで全く口を開かずペコッとだけするところもいつもと変わらない

パフォーマンスもいつもの健太

本当に何も思ってくれてないの…?

そう思った時にカメラさんが健太をバッチリ捉えた

急なカメラ目線で目が合う

目が合うって言っても画面越しだし、全視聴者に同じことが起きてるんだけどね

それでも、いつも目を真っ直ぐ見て話してくれる健太の姿がフラッシュバックして涙が止まらなくなった

私もう少し、心を広く持てなかっただろうか

家出なんてしないで気持ちを伝えることが出来なかっただろうか

もっと早くこの家に帰ってくることは出来なかっただろうか

もっと、もっと…もっと

後悔が部屋の隅々から押し寄せてくるようで、たまらず外に飛び出した

冬になりかけ、寒すぎる外

コートのポッケに手を突っ込んでとりあえずコンビニに入った

いらっしゃいませーと言う店員さんのすぐ後ろにズラリと並ぶタバコ


「吸わせねぇけど」

そうだよね

吸わない方が絶対にいい、体に悪いし

でも、どうしてもあの香りが欲しくて

ライターとタバコを手にコンビニを後にした

タバコを1度も吸ったことがない私、何をどうしたらいいかも分からない

だけど、敵の近くの喫煙所に駆け込んで周りの人の見様見真似で火をつけてみる

他の人のむさ苦しいほどのタバコの匂いがキツくて火をつけたタバコを持って外に出た

吸うのはやっぱりドキドキする

だけど煙から匂うこの香りが健太の香りでそれだけでなんだか落ち着いた











健太
え、…なに、してんの?
あなた
…え、、?健太?
健太
あなた…タバコ、
あなた
あ、これは…
健太
吸った?
あなた
ううん、吸えなかった。やっぱりちょっと怖い


私の言葉を聞き取ると手からタバコを取り上げた

それはそのまま彼の口に運ばれる


健太
よかった。吸ってなくて
あなた
…ごめん、なさい
健太
なんで買ったの
あなた
寂しかった
健太
え?
あなた
そのタバコは特別なの。他のと違って
あなた
健太が出ていくから…
健太
そういうのずるくない?


一瞬で大好きな香りに包まれていた

ちょっと苦しいくらいにぎゅーっとされるのも嫌じゃない

健太
ごめんな
あなた
うん、私もごめん
健太
お腹空いた
あなた
餃子作る?
健太
うん
健太
帰ろ
あなた
うん…!
健太
あ、あなた
あなた
なに?
健太
好きだよ
あなた
…そっちもずるいじゃん


そう

そうやって隣でいたずらっぽく笑っててよこれからも

あなた
健太のばか
健太
はぁ?あなたにばかとか言われたくないしー
あなた
ばかばかばかー!!
健太
本当は好きなくせに
あなた
んー!!


これからもよろしくね

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