彩side
若武「へぇ、知らなかったよ。お前って比に弱いんだ」
はやし立てられるように言われて上杉くんはムッとしたらしく、きゅっと口元に力を入れた
何も言わなかったけれど、怒っていることはすぐにわかった
若武「へえ!数の上杉の意外な弱点発見だ。へえ!」
上杉「別に、そういう訳じゃない」
若武「否定するとこが怪しいんだなぁ。絶対比に弱いんだ」
若武「そうとわかれば、俺もチャリ捜しなんかやめて勉強しようかな。お前を出し抜いて、トップ賞取れるかもしんないもんな。それで親を喜ばせれば今回のことも多分許してもらえるだろうしさ。俺んちの親って、お前んちの親といつも親しくしてるけど、ほんとはすげぇ意識してんだぜ。総合では、上杉さんのとこのノリちゃんにだけは負けないでよって、いつも言ってるもん。お前を抜けば、すっごく悦ぶことは目に見えてる。そうしようかな」
上杉くんはたまらなくなったらしくて、噛みつくように叫んだ
上杉「やってみろよ!」
若武は、ニヤッと笑った
若武「いいのか。俺は、やるって言ったら本気でやるぜ。算数だけに集中して、お前を潰してやる。そのためにら他は投げても良い。俺はBだからな、Cのお前みたいに完璧でなくても許される。だけどお前は、得意の算数でトップ賞取れなかったら、名前が泣くだろ。数の上杉だもんな」
上杉くんは息をつめた
顔が見る間に青ざめていく
私は気の毒になった
若武は上杉くんをいじめてるんだ
そう思えた
若武「上杉、2ヶ月前のことを思い出せよ。俺がお前と賭けをしてさ、算数でお前からトップを奪ったときのことをさ。どんな気持ちがした?俺に取られるくらいなら、まだ他の誰かに取られた方がましだって思えるくらい、悔しかっただろ。それが次のテストにも響くぐらいのダメージだったんだよな。親にも知らない奴に取られた時の倍は、怒られたはずだ。何で若武さんとこのオミちゃんなんかに譲ったのってさ。もう一度、あれを繰り返したいのかよ」
若武「それよりは、俺とチャリ捜した方がいいと思わないか。お互い、親にガーガー言われるのは避けたいよな。」
若武「お前はお前で算数のトップを守り、俺は俺で総合で良いとこを取る。テリトリーは守った方が、お互い平和さ。上杉、俺はお前の頭を買ってる。この犯人を捜し出すためには、どうしてもお前が必要なんだ。協力しろよ。お前の勉強時間の全部をくれとは言わない。3分の1か4分の1でいいから俺に貸してくれ。この分は、いつかきっと返すからさ」
言い終わって若武は口をつぐみじっと上杉くんを見つめた
涼しげな目でまっすぐに、食いいじるようにじっと
その視線の前で上杉くんはしばらく黙っていたけれど、やがて諦めたように大きく息をついた
上杉「わかった。協力するよ」
若武は満足そうに頷いて、視線を雨夜さんにうつした
雨夜さんも闇がかかったような青い瞳で若武を見つめかいしている
若武「雨夜、お前の力も欲しい。お前はさっき、俺たちが気づけなかったチェーンのことを見つけてくれた。それに、俺たちは今日初対面だ。人が少しでも早く仲良くなるにはどんな方法があると思う?ひとつのことを、皆で協力してやりとげることだ。その中でお互いのことを知り、理解し合う。俺は、お前のことも理解したい。だから、一緒にやってくれないか」
雨夜さんは長い睫毛を伏せて考えているようだ
赤いメッシュ
少し風が吹いて長いひとつ結びをした髪が揺れている
若武もただ黙って見つめている
『うん。いいよ』
『だけど条件ありでいい?』
若武「ああ」
『時折、家の都合で協力できない場合がある。それでもいい?』
若武「もちろん」
『...なら、若武くんの勝ちだね』
雨夜さんはそう言い手を若武の前に出した
若武もその手を握った
若武「よろしくな」
『こちらこそ』
小塚「こうなると思ってたよ。だって若武って最後には絶対、自分の思い通りに人を動かしちまうんだもの。だから言ったんだ、人をそそのかす名人だってさ」
私は若武を見た
若武は両手をいつものようにハーフパンツの後ろのポケットに突っ込んで、肩をそびやかし、得意そうに笑っていた
あなたside
若武「じゃ現場検証は、これで終わりだ」
派手な言葉で言いながら若武くんはアタシたちを見回した
若武「次は、捜査会議だ。特別クラスを使おう。行くぞ」
特別クラスに皆が揃うと若武くんが黒板に[マウンテン・バイク消え失せ事件]と書いた
彩「そこは消失事件か、あるいは盗難事件とした方がいいわ」
若武くんはすぐさま書き直した
ぜってぇ、そっちの方が格好いいと思ったんだろ
若武「では、諸君」
おぉ、なんか...ははは
若武「これについて考えてみようではないか」
[犯行時間─17時~21時3分]
若武「俺が秀明に着いたのが、午後5時5分。さっき出ていった時が9時3分だったから、はっきりしてる」
[場所─秀明ゼミナールの西側の外。スナック‹バースデー›とパチンコ屋‹パーラー銀河›の裏口に挟まれた路地]
[被害者─若武和臣]
[盗難品─買ってもらったばかりのピカピカのマウンテン・バイク]
『買ってもらったばかりのと、ピカピカのはいらない。只のマウンテン・バイクでいいの。もしくは、買った日付、その自転車の型番、メーカーをかいたらいいと思う。本来はそういうもの。』←探偵社員
『特徴は?それだけなの?何かつけたりしてなかったの』
上杉「あるだろ。若武、言えよ」
若武くんはやがて諦めたように言った
若武「同じクラスの女子からもらった奴だ。バレンタインデーに、チョコレートといっしょにだ」
黒木くんがピュッと口笛を吹いた
黒木「やるじゃん、若武。そいで今、その子とどうなってるの?」
若武「黙れよ。捜査と関係ねーだろ」
上杉「関係あるね。その女が絡んでるのかもしれない」
若武「あの子は、怪力じゃないぞっ!」
若武くんが叫ぶと3人が一斉に顔を見合わせた
皆が遊び始めたからスマホのネットニュースを見ることにした。
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どうも作者です!
皆さんに聞きたい事がありまして、文ストの原作をこの物語にいれるかいれないか的な事なんですよ
(これが決まらないと物語が進まなくて.......)
だからお願いしま((殴
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。