第5話

消えた自転車は知っているその4
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2021/02/13 11:46
若武「上杉、普通の人間じゃないって言ったら、誰なんだよ。プロレスラーとか?」

小塚「きっとタイガー・マスクだ!」

上杉「やめろよ」

上杉「これだけの手がかりで犯人を見つけるのは、とても無理だ。あきらめて、盗難届けでも出すんだな。保険がかけてあるはずだから、それで新しいのが買える」

若武「ダメだ」

若武くんは言った

若武「保険は親が管理している。秀明には乗ってっちゃいけないって言われてるんだ、それを無視したんだから、今さら盗られたなんて、言い出せねーよ。メンツってものがある」

きっぱりと言い切ってからうめくように付け加えた

若武「それに、このことがバレたら、小遣いが無期限ストップだ。いくら新しいチャリが来ても、小遣いが無いんじゃ動きがとれん」

黒木くんは

黒木「チャリか、小遣いか、それが問題だ」

小塚「若武、僕のDVD返せよ。先月貸しただろ、アニメ・ハムレット」

おぉ、良く借りんなぁ

若武「わかった。おまえから借りてるもんは全部返す。返すから、頼むから、お願いだから話の途中に口を挟むな!」

小塚くんを黙らせアタシたちを見回した

若武「とにかく、俺はやるぞ!俺のマウンテン・バイクを盗んだ犯人を必ず捕まえて、取り戻す!」

上杉くんは言った

上杉「じゃ、かってにやれよ。俺は降りる」

上杉「今週の三谷大塚テストは、どうしても上位をキープしたいんだ。総合だから次の正会資格に一番影響する。勉強時間が必要だ。お前もそうしろよ。メンツより成績だ。小遣いは諦めろ。じゃあな」

上杉くんはアタシたちを残して行こうとしていた

『悪いけど、アタシも抜ける』

皆が驚いたようにアタシを見た

今回の長期任務は油断があまり出来ない

任務に専念したいからこれ以上は出来ない

アタシもその場を去ろうとした



彩side

上杉くんと雨夜さんが私たちを残して行ってしまおうとしている

彩「止めないの?」

黒木くんは

黒木「上杉のことは上杉のじゆうだからな。もちろん雨夜も」

私は少し驚いた

だって、女の子同士のお友だちだったら絶対にそんなことない

相手が困っているときに、自分の勉強のことなんて言い出さないし、言い出せない

もし言ったら、もう友達ではいられないってお互いにわかってるもの

一緒に行動すること、同じことをすること、それが友だちってものだと、殆どの女の子は思ってる

相手が自分と同じことをし、同じことを思ってくれること、それが友達の印だって

それをしないと、自分が相手を裏切ったみたいに思えてきて、自分が嫌になる

でも黒木くんに言われて、私は、その時感じたのだった

私が今まで考えてきたような友情って、自由がないのかもしれないって

お互いが自由で、好きなことをしていて、それでも友達でいられるって、すごい

けれど、そういうときは、どこで友情を確かめるのだろう

何が手がかりになって、お互いが友達って思えるのかな

それが知りたいと思った

そうすれば、そんな友情を結ぶことができるかもしれない

それに雨夜さんのような強い子になれるのかもしれない

若武「上杉」

若武「おまえ、今週のテストに自信ないんだな」

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