第11話

第9章「辛い時こそ笑え」
223
2021/03/05 15:42
英田灯理(あいだとうり)
はぁっ、はぁっ…、はぁ…。



鬼はやはり血鬼術を使った。あらゆる物体を自由に操る術だ。恐らく、なかったはずの堂が急に現れたのもこの鬼の血鬼術の仕業だろう。


雨瀬佑作(あませゆうさく)
まずいな…、こりゃ思った以上に鬼が強い。どうする、灯理?



確かに今の状況はまずかった。3人ともかなり負傷している。鬼の血鬼術のせいでこちらが傷つく一方で、刀が鬼に届きもしない。この3人で強大な鬼を倒すには…。


英田灯理(あいだとうり)
俺があいつを引きつけよう。隙を見て2人で鬼を斬ってくれ。
後輩隊士
囮なら僕がやります!一番階級が低い僕が…。もう僕は逃げない。一生懸命鬼に立ち向かってお二人の役に立ってから死にます!
雨瀬佑作(あませゆうさく)
灯理、死ぬぞ?こんなところで囮作戦なんかするもんじゃねぇ。こんなところで死んだら、お前の夢はどうなる?



俺の夢、それは“この目で鬼のいない世界を見る”ことだ。鬼殺隊士になり、先生の家を去る直前に先生と約束した。



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河田吉三郎(かわだきちさぶろう)
のう、灯理。最後に一つ、聞いてええか?
英田灯理(あいだとうり)
なんでしょう、先生?
河田吉三郎(かわだきちさぶろう)
お前さんの夢はなんや?
英田灯理(あいだとうり)
夢…
河田吉三郎(かわだきちさぶろう)
鬼殺隊に入れば辛いことばっかりや。常に死がそこにある。そんな中で灯理が生き抜くためのコツは、絶対に叶えたい夢を持っとくことや。どんな困難に直面しようと、その夢だけは諦めんようにすれば辛いことも乗り越えれる。どんなでっかい夢でもええ。さぁ、言うてみぃ。
英田灯理(あいだとうり)
俺は…、この目で鬼のいない世界を見たい!俺が生きている間に鬼をこの世界から滅したいです!
河田吉三郎(かわだきちさぶろう)
いい夢や。それを胸に頑張りぃや。灯理、お前さんはワシの自慢の弟子や!
英田灯理(あいだとうり)
はい!行ってきます!
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その夢を叶える為に、俺はこんなところで死んでたまるものか。


英田灯理(あいだとうり)
俺は死なない。俺が死ぬ時は鬼がいなくなった時か、仲間を守る時だけだから、なっ!!



そう言って俺は鬼に向かって地面を蹴った。


英田灯理(あいだとうり)
おい鬼!もう遊びは終わりにしよう。水の呼吸_______
後輩隊士
灯理さん!!
雨瀬佑作(あませゆうさく)
まったく、お前のそういうところが男前だっつってんだよ。さぁ、俺たちも行くぞ!灯理を死なせるな!
後輩隊士
はい!!



心臓が激しく音を立てる。血液が速度を増して身体中を駆け巡る。酸素が体の隅まで運ばれる。体温が急上昇する。刀に込める力がみなぎる。鬼の細かい動きも見えるようになる。鬼に刀が届く。いける、と思った。後ろには佑作たちがいる。安心して背中を預けられる。今思えば、その気の緩みが、慢心が、俺が足元をすくわれる原因だったのかもしれない。


木を足場にしてもう一度鬼の方へ跳躍する。


英田灯理(あいだとうり)
水の呼吸 壱ノ型 水面斬り!!



刀は鬼の横腹辺りから斜めに肩まで斬り裂く。そしてそのまま頸を狙おうとした、その時だった。


英田灯理(あいだとうり)
!?



死角から鬼の腕がこちらに伸びてきた。だめだ、間に合わない、殺され…


後輩隊士
させません!!



癸の少年が腕を斬った。が、


後輩隊士
うわっ!



鬼の血鬼術により飛んできた大木にぶつかり、遠くに吹っ飛ばされてしまった。


雨瀬佑作(あませゆうさく)
あ、おい!!



駆け出そうとした佑作の隣に着地し、言う。


英田灯理(あいだとうり)
すまない、俺が反応しきれなかったばかりに。俺が言うのもなんだが、佑作、そっちへ行くな。ここが一人になったら俺たちは全滅だ。
雨瀬佑作(あませゆうさく)
それもそうだ。あいつはきっと生きてると信じよう。俺たち二人で鬼を倒すぞ。
英田灯理(あいだとうり)
ああ。





それからどれくらい時間が経っただろうか。俺たちはまだ鬼を倒せないでいた。



雨瀬佑作(あませゆうさく)
灯理!右から回れ!一気に斬るぞ!
英田灯理(あいだとうり)
分かった!



そして、ついに恐れていたことが現実となる。


英田灯理(あいだとうり)
うわ、しまった。外した!



また俺の方に腕が伸びてきた。早く、体勢を持ち直せ!刀を構えろ!


雨瀬佑作(あませゆうさく)
灯理!!!




グサッ。


雨瀬佑作(あませゆうさく)
カハッ…!!




赤い血が俺に降りかかる。








鬼の腕が佑作の胸あたりを貫いている。ちょうど、心臓の辺りを。


英田灯理(あいだとうり)
佑作!!!!
ああ、愚かだ。愚かだなぁ。これだから人間は面白い。



地面に横たえた佑作が俺の隊服の袖を引っ張る。


雨瀬佑作(あませゆうさく)
とう、…り。撤退だ…。この島を出ろ…、今すぐに。
英田灯理(あいだとうり)
佑作!じゃあお前や癸の少年はどうする!お前らを見捨てることなんか俺にはできない!
雨瀬佑作(あませゆうさく)
はっ…、じゃあここで…、3人仲良く死ぬか…?それじゃあ、今までの隊士と…、一緒だろ…。生還しろ…、灯理。本部に…、お前が見たありのままを、話せ。
英田灯理(あいだとうり)
くそっ…!



どうして俺はいつも大切な人を守れない?大切な人はすぐ俺の前から消えていく。守るために刀を握っても手の平から命がこぼれていくのを止められない。


英田灯理(あいだとうり)
佑作、俺一人でこの島を出ることはできない。だから、お前の言うことも聞けない。
雨瀬佑作(あませゆうさく)
な、にを…。
英田灯理(あいだとうり)
おい、お前の相手は俺だ、鬼。俺を喰いたきゃこっちに来てみろよ。
雨瀬佑作(あませゆうさく)
バカか、灯理…!カハッ、ゴホッゴホッ…
英田灯理(あいだとうり)
佑作、お前の親友はこういう奴だ。



佑作から離れ、遠くへと逃げる。俺のせいで二人がこうなった。ならその責任は俺が取らなければ。この島から逃げるということはその責任を負わないということだ。


英田灯理(あいだとうり)
桜子さん、援軍を頼む。場所は天津島。癸の隊士は生死不明、己の隊士が一人、瀕死状態。そしてもう一人、己の隊士が応戦していると伝えてくれ。
桜子さん
了解ヨ。トーリ、私ガ援軍ヲ連レテクルマデ、死ヌンジャナイワヨ。
英田灯理(あいだとうり)
ああ、分かってる。



いつもおしゃべりな桜子さんは、こういう緊急事態の時は静かに喋る。とても頼りになる、あねさん気質の俺の相棒。


英田灯理(あいだとうり)
さてと、俺とお前、どっちが我慢強いか、勝負しようか。



辛い時こそ笑え、英田灯理。

|・ω・)ノ[終]|・ω・)ノ[終]|・ω・)ノ[終]|・ω・)ノ[終]|・ω・)ノ[終]

佑作ーっ!!佑作が…、佑作が…!
大変なことになりました。佑作は死んでしまったのか、それともまだ生きているのか。それはまだ今は分かりません。それでも灯理くんは前に進むしかありません。鬼を倒すしかありません。佑作と癸の少年のためにも。自分が3人の中で一番動けるのですから。と言っても、彼もかなりボロボロです。限界はすぐそこまで来ています。いや、もう彼の限界は来ているのかもしれません。それでも諦めない。刀を握り続ける。型を繰り出し続ける。

果たして、灯理くんは、佑作は、癸の少年は、どうなったのか。これから灯理くんはどうなっていくのか。まだまだです。始まったばっかりです。


佑作が「あ、おい!!」って言ったところ、どうしても「あおい」って名前を呼んでるようにしか見えなくて、癸の少年の名前が「葵くん」だったらいいなってずっと思ってる。(決めてはない)


第9章にして、展開早過ぎないか??‪w

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