第3話

第1章「数少ない幸せ」
454
2021/02/26 14:43
俺、英田灯理あいだとうりは農家の長男として生まれた。父さんと母さんは優しい人で、俺が「学問をしたい」と言うと、すぐに学校に通わせてくれた。

さらに俺の下には4人、弟と妹がいる。



英田灯理(あいだとうり)
ただいま。
流(りゅう)
おかえり兄さん。今日は兄さんの好きなカブが採れたよ。今、母さんが煮付けにしてくれてる。




次男のりゅうだ。2つ下の弟で物静かな性格だ。


英田灯理(あいだとうり)
流、悪いな。本当は俺が畑仕事を手伝わなきゃいけないのに。
流(りゅう)
気にするなよ。下の兄弟の中じゃあ俺が1番年上だし。兄さんは安心して学校行ってくれ。
光(ひかり)
あ!お兄ちゃんだー!!




長女のひかり。5つ下の妹で、名前の通り明るくて素直な子だ。



英田灯理(あいだとうり)
光、いい子にしてたか?
光(ひかり)
うん!!あのね、今日私、お母さんのお手伝いしたの!カブを切ったんだよ!
英田灯理(あいだとうり)
へぇ、そうなのか!今日の夕飯が楽しみだなぁ。
風太(ふうた)
兄ちゃーん!!今日も学校行ってきたんだろ?どんなだったんだ?お話してくれよ!




三男の風太ふうた。7つ下の弟でやんちゃ坊主だ。好奇心旺盛で、よく学校の話を聞きたがる。



英田灯理(あいだとうり)
風太ー!お話はあとでしてやるからなぁ。ちょっと待ってろよ。
風太(ふうた)
うん!
すみれ
とーにぃ



うしろから抱きついてきたのは末っ子、次女のすみれ。10コ下の妹だ。小さな体で「とー兄、とー兄」とあとをついてくるのが可愛らしい。



英田灯理(あいだとうり)
おー、すみれ!おかえりしに来てくれたのか!
すみれ
これね、とー兄と、すみれ描いたの、見て!
英田灯理(あいだとうり)
上手だなぁ、すみれは。将来は立派な絵描きさんになれるかもしれないなぁ!
すみれ
すみれね、大きくなったらとー兄の絵をいっぱい描くの!
英田灯理(あいだとうり)
そうかそうか!兄ちゃん、すみれが大きくなるの楽しみにしてるな!
流(りゅう)
光、風太、すみれ。流兄りゅうにぃとこっちで待っていような。兄さんはまだ荷物もおろしてないんだ。
英田灯理(あいだとうり)
すまない、流。ありがとう。




俺は自室に荷物を置き、居間で新聞を読んでいる父と、台所で料理をしている母に帰宅を知らせることにした。




英田灯理(あいだとうり)
父さん、ただいま。




父さんは新聞から目を離し、こちらを向いた。



灯理の父
ああ、灯理。おかえり。学校はどうだった。
英田灯理(あいだとうり)
楽しかったよ。今日は水について学んだんだ。水って決まった形を持っていなくて、どんな形にもなれる。いろんな可能性を秘めているんだ。水は奥が深くて調べても調べても新たなことが分かって飽きないんだよ。
灯理の父
水か。確かに言われてみればそうだな。人間が生きていくのにも、植物を育てるのにも水がいる。
灯理はよく学校で勉強しているんだな。




父さんは優しく頭を撫でてくれた。小さな頃から父さんの背中を見て育った俺は、いつか自分も父さんみたいに優しくて寛大な人間になりたいといつも思っている。


灯理の父
さぁ、母さんにも挨拶してきなさい。
英田灯理(あいだとうり)
分かった。




母さんは台所で煮込んでいた。恐らく流の言っていたカブだろう。冬になると採れるこの野菜は俺の大好物だ。甘くて柔らかくて煮込むと味がよく染みて。もうカブが採れる季節になっていたのか。



英田灯理(あいだとうり)
母さん。
灯理の母
灯理、おかえり。今日はカブの煮付けよ。たくさん採れてねぇ。余っちゃったから残りはお味噌汁にしようかと思ってるの。灯理、カブ好きでしょう?
英田灯理(あいだとうり)
うん。母さんの作る料理は何でも好きだよ。何か手伝おうか?
灯理の母
いいわ、いいわ。灯理も学校で疲れているでしょう?手伝わなくていいわ。
あ、それじゃあ、チビたちの面倒見ててもらってもいいかしら?いつも悪いわねぇ。




割烹着姿の母さんは申し訳なさそうに頼む。ちなみに“チビたち”というのは下の兄弟のことだ。




英田灯理(あいだとうり)
畑仕事も家事も手伝えてないから下の子たちの面倒を見るくらい全然大丈夫だよ。むしろ俺の方が申し訳ないよ。俺だけ学校に通わせてもらっているんだから。




本当は長男である俺が率先して手伝いをして家を継いでいかなくてはならないのに、「灯理のやりたいことをやりなさい」と言ってくれるのが俺の両親だった。











俺は幸せだった。俺を優しく見守って、育ててくれる両親と、可愛い弟妹たち。家族がいれば、それで十分だった。他にも何も望むものはない。













それなのに_______________
























この世は俺の数少ない幸せをも奪っていく。



|・ω・)ノ[終]|・ω・)ノ[終]|・ω・)ノ[終]|・ω・)ノ[終]|・ω・)ノ[

さぁ、いよいよ動き出しますよ。灯理くんの運命が。彼の悲劇的な物語が。



この話、受験勉強していた期間にルーズリーフに書いていたんですけど、今52ページ目(ルーズリーフ26枚分)まで書き終わりました。まだまだ終わりません。きっと70~80ページくらいになるのでは…?100ページとかいくのでは…?



またまた長編です。最後までぜひ、読んでみてください!灯理くんが定められた運命に対してどう立ち向かっていくのか。足掻いていくのか。何が起こって、誰と出会って彼は18年という短い生涯を終えることになるのか…。



ちなみに、灯理くんの弟と妹たち。実は区別方法があるのです。吹き出しだったら名前が出てくるから誰が喋ってるのか分かるけど、カギカッコで書いてると誰がいつ喋ってるのか分からなくなるのです。
その方法は…ずばり!


「灯理くんの呼び方」です!

次男 流くん▷▶︎▷▶︎「兄さん」
長女 光ちゃん▷▶︎▷▶︎「お兄ちゃん」
三男 風太くん▷▶︎▷▶︎「兄ちゃん」
次女 すみれちゃん▷▶︎▷▶︎「とー兄」


こんな感じです。気にして読んでみてください(❁´ω`❁)

プリ小説オーディオドラマ