第15話

第13章「深青の瞳」
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2021/03/12 15:49
次の日、ふと人の気配がして見てみると、換気のために開け放たれていた戸のところに水柱が立ってこちらを見ていた。


英田灯理(あいだとうり)
うわっ、水柱様!?いつからそこに…。
冨岡義勇
30分程前から。
英田灯理(あいだとうり)
声掛けてくださいよ!びっくりした…。
冨岡義勇
入ってもいいだろうか。
英田灯理(あいだとうり)
遅いですよ!どうぞ、お入りください。
冨岡義勇
失礼する。



水柱は丸椅子に腰掛けた。本当、よく30分間もそこにいたな…。物音一つしなかったぞ。


冨岡義勇
昨日は悪いことをしたと思っている。お前の親友の死を伝える方法は他にもあった。しかし、俺の言葉でお前を傷つけてしまった。すまない。
英田灯理(あいだとうり)
謝らないでください!!水柱様は何も悪いことはしていません。ただ事実を俺に伝えてくださっただけなんですから。
冨岡義勇
なんだか、昨日とは様子が違うな。
英田灯理(あいだとうり)
え?
冨岡義勇
昨日よりも生き生きとしている。



言われてみればそうかもしれない。まだ佑作を失った悲しみが癒えたわけではないし、彼に対する罪悪感はこの先も消えることはないだろうが、きちんと自分の中で整理ができ始めている気がする。


英田灯理(あいだとうり)
それなら、胡蝶さんのおかげだな…
冨岡義勇
胡蝶の?
英田灯理(あいだとうり)
はい。彼女は昨日、水柱様が帰った後にずっと俺のそばにいてくれましたから。胡蝶さんがいてくれたから俺はこれからも生きていける。
冨岡義勇
お前は胡蝶のことが好きなのか?



水柱の唐突な質問に、まさか冗談を言っているのではないかと思って顔を見るが、その顔は至って真面目だった。それどころか青い瞳に吸い込まれそうになって顔を背けてしまう。


英田灯理(あいだとうり)
好き…とは恋愛的な意味ですか?
冨岡義勇
ああ。
英田灯理(あいだとうり)
そういう意味で彼女を見たことはありませんね…。胡蝶さんはあくまでも俺の友達です。
冨岡義勇
胡蝶はお前のことが好きなようだが。
英田灯理(あいだとうり)
え!?



初めて聞く話だった。胡蝶さんが俺を?あの美人で優しくてなんでも出来る胡蝶さんが…?
顔がますます赤くなって体が熱くなるのを感じる。俺はその話題から逃げるように不自然な形で話を変えた。


英田灯理(あいだとうり)
そ、それよりも、俺、水柱様に伝えないといけないことがあって…。
冨岡義勇
俺に?
英田灯理(あいだとうり)
はい。お礼を言ってなかったな、と。天津島の任務で助けてくださり、ありがとうございました。水柱様は命の恩人です。貴方のおかげで俺は…
冨岡義勇
生き残ってしまった、か?
英田灯理(あいだとうり)
いえ、もうそんなことは言いません。貴方のおかげで俺は今もこうして生きている。佑作の分まで戦える。そのことに感謝をしています。



水柱と話していると身体中の痛みを何故か感じない。二ヶ月以上経っても身体中に包帯を巻かれ、痛みが残っている。だが、今この時間だけは痛みや苦しみを忘れることができるようだ。


それから俺と水柱はたくさんの話をした。気づけばもう夕方で、水柱の任務の時間になっていた。


英田灯理(あいだとうり)
あ、もうそんな時間なんですね。
冨岡義勇
ああ、もう行かねばならない。一つ、聞いてもいいだろうか。
英田灯理(あいだとうり)
なんでしょうか。
冨岡義勇
明日も、ここに来ていいか?
英田灯理(あいだとうり)
…!
驚いた。俺も同じことを願っていたからだ。でも相手は柱だし、療養中の俺のところへ来れるほど暇ではないことは分かっていた。それなのに水柱の方から言ってもらえるとは思っていなかった。


英田灯理(あいだとうり)
いいんですか?
冨岡義勇
ああ。久しぶりに誰かと話せるのが楽しかった。
英田灯理(あいだとうり)
じゃあ、待ってますね。



水柱はあまり自分の感情を表に出さない人だと聞いていた。だが今、俺と話したこの時間が楽しいと言ってくれた。その言葉に舞い踊りそうなほど喜んでいる自分がいた。時々感じるこの気持ちを知るには俺はまだ物事を知らなさすぎた。

|・ω・)ノ[終]|・ω・)ノ[終]|・ω・)ノ[終]|・ω・)ノ[終]|・ω・)ノ[終]

更新遅くなってすみません!!とても忙しくて、なかなか小説を書く時間が取れませんでした…。

第13章です。だんだんと義勇さんと灯理くんの関係性が変わってきましたね。そして灯理くんの感じている気持ちにもだんだんと変化が…。

次回はもっと2人の関係性が変わっています。胡蝶さんも帰ってきて、灯理くんはどうなる…??




そういえばたまごぼーろ🍳、この間初めて髪染めました!写真はTwitterにあげとくね(需要ない)

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