第4話

第2章「最後の日」
330
2021/02/27 03:51
あれは俺が13歳だった、1939年の暑い時期のことであった。



英田灯理(あいだとうり)
それじゃあ父さん、母さん。行ってくるよ。



俺は弟妹たちを連れて街に野菜を売りに行った。この2年前に始まった支那事変しなじへん(日中戦争)のせいで都市部では物不足が続いているらしい。俺たちの住んでいるような田舎では相変わらず食物を育てているから、俺の家では俺が学校が休みの時に街に行って野菜を売り、生計を立てていた。



灯理の父
悪いな、灯理。頼んだぞ。
英田灯理(あいだとうり)
大丈夫だよ。学校が休みだからこそこのくらいのことはしなくちゃ。
灯理の母
灯理、気をつけて行ってくるのよ。無理はしなくていいからね。暗くなる前に帰ってきなさい。
英田灯理(あいだとうり)
うん、わかった。
灯理の母
流、光、風太、すみれ。お兄ちゃんの言うことをちゃんと聞くのよ。手を離したらダメだからね。
風太(ふうた)
はーい!



裏山を越え、畦道を通り、街を目指す。野菜の入ったリヤカーを引く音がカラカラと響いていた。


風太(ふうた)
なぁ、兄ちゃん。この前の話の続きしてくれよ!
光(ひかり)
あ、私も聞きたーい!
すみれ
すみれも!
英田灯理(あいだとうり)
この前の…。ああ、あの話だな?いいぞ。どこまで話したっけなぁ。
光(ひかり)
流兄、もしかして怖いの?
風太(ふうた)
怖いから黙ってるんだ!!
流(りゅう)
はぁ?違うよ。俺は別にどっちでもいいの。



この前の話というのは先日学校で先生が言っていた人間を食べてしまう化け物の話のことだ。


すみれ
すみれ、この前とー兄がどこまで話したか覚えてるよ!えっとね、あのね、いたずら好きの男の子が夜遅くまで遊んでたら…ってところまで!
英田灯理(あいだとうり)
そうだったなぁ。よく覚えてるな、すみれ。




カラカラカラ、カラカラ。



英田灯理(あいだとうり)
その男の子は家に帰る途中で大きな化け物に出会ったんだ。そしてその化け物は男の子に言った。『お前がいたずらばかりするから、お前の父さんと母さんを食ってしまったぞ。次はお前の番だー!』ってな。男の子は逃げた。自分が今までしてきたいたずらを反省しながら、『ごめんなさい、ごめんなさい』って泣き叫んでいた。それからというものその男の子は村一番の正直者になったそうだ。
光(ひかり)
怖いねー。




光が言った。けれども光の目は輝いている。



流(りゅう)
風太はいたずらっ子だから化け物に食われるんじゃないか?
風太(ふうた)
う、うるせぇやい!そういう流兄だって、知ってんだからな。この前流兄が兄ちゃんのおやつ食べてたの!
流(りゅう)
お、おま…。見てたのか。



弟妹たちの会話を聞きながら俺はますます笑顔になった。この子たちの兄になれて俺は本当に幸せだ。





















日が西に傾く頃にはリヤカーの中の野菜は全てなくなっていた。



流(りゅう)
兄さん、全部売れてよかったな。
英田灯理(あいだとうり)
そうだな。



風太とすみれが疲れて寝てしまい、俺と流がそれぞれを抱っこしている。カラカラとリヤカーを引くのは光だ。



英田灯理(あいだとうり)
光、疲れてないか?
光(ひかり)
大丈夫。




家まではまだだいぶある。日が落ちきる前までに家に着けるだろうか。



流(りゅう)
兄さん、空になったリヤカーに風太とすみれを乗っけて兄さんが引っ張っていけば少しは早く着けるんじゃないか?
英田灯理(あいだとうり)
そうだ、そうすればいいのか。すみれ、風太、ちょっと起きてくれ。




リヤカーに乗れることにはしゃいだのか、風太もすみれもすっかり目が覚めたようだ。



風太(ふうた)
ゆうやけこやけで〜♪
光(ひかり)
ひがくれて〜♪



真っ赤な夕日が俺たちの影を長くしていく。




カラカラカラ、カラカラカラ。





この山を超えればもう家だ。

|・ω・)ノ[終]|・ω・)ノ[終]|・ω・)ノ[終]|・ω・)ノ[終]|・ω・)ノ[終]

英田家の日常その2です!平和な日々もここまで……なんていうネタバレはこの辺までにして、ここから怒涛の展開が待っています。どうして灯理くんは鬼殺隊に入ることになるのか。その重要な原因になる事件が次のお話で起こります。




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それじゃあまた次回。ばぁーい!

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