あなたside
ある日のこと。
私の目にはとんでもない光景が写っていた。
アイナナが、ファンに取り囲まれていた。
たまたまここら辺に用事があって来たら、ものすごい騒ぎが起きていて何かと思えば...。
なんか、ものすごくみんな困ってる...。
急ぎの用事とか?だとしたら、...結構ヤバそう。
用事が何かは分からないけど、アイナナはアイドルだ。この後仕事があったりしたら?
それに遅れて、アイナナの仕事が減ったり、怒られたりしたら...!?
私の好きなアイドルがそんなことになるのは、絶対に避けたい。
あの人だかりをどうにかするなんて...それこそ、有名な人が何かやるとかしないと...、
ここで、私は思い付いた。
私自信は全然有名じゃないけど、「sana」なら?
「sana」はそこそこ有名で、しかもアイナナの曲を歌うことが多いから、アイナナファンの人は私を知っている可能性が高い。
今、ここでアイナナの曲を歌えば、少しは私の方に意識を向けられるんじゃないか。
そんなことを思い付いた。
けど、、、
いつもは顔を隠してるからおもいっきり歌えるけど、今は顔丸出し。
たくさんの人に見られるかもしれないし、みんな私を無視するかもしれない。
想像するだけで、足が震えた。
...一織くん、みんな、困ってる。
私がアイナナのためにできること、全部やってこそ、本当のファン、だから。
決心して、近くのステージにあったマイクを借りて、歌った。
「sana」として。
私が歌うと、予想通りファンの人達が私に注目する。
ダダダダッとアイナナのみんなはその場から離れる。
アイナナのみんなが囲まれてた中から抜け出せて良かった、歌って良かった、と思った。
私も変に囲まれる前にその場から逃げ去った。
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自分がさっきまで歌っていたのがありえない。
今さら怖さで足が震えだした。
...ふぇ?後ろから聞き覚えのある声が聞こえて...て、
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。