あなたside
そして次の日の朝美味しそうな匂いに誘われて
目を覚ましリビングに行くと
朝食の準備をしている親友の姿
『…おはよぉ』
美 「あ、あなたおはよ」
「昨晩はよく眠れた?」
『おかげさまで』
美 「ならよかった。ご飯できてるからどうぞっ」
『ありがと~ いただきます!』
彼女の作る料理はすっごく美味しくて
いい奥さんになるんだろうなぁ~って、
『もう何から何までほんとごめんね』
『相葉くんにも申し訳ない……』
彼女と相葉くんはこの家で一緒に暮らしてる
今はたまたま相葉くんが出張かなんかで居ないけど
美 「そんな気にしなくていいって」
「今、出てていないしさ!」
『うん、、ほんとにありがと』
美 「じゃあ私今日早く行かなきゃだから行くね」
『…は~い いってらっしゃい』
美 「鍵ここに置いとくからよろしく!」
そういって足早に出勤する彼女を送り出して
いつもなら彼に言うはずの
“ いってらっしゃい ”
それが言えないなんて少し寂しい気がした
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課長「じゃあそういう事だからよろしく頼んだよ」
『……分かりました』
私は今、こう言わざるを得ない状況だった
事の発端は30分前、今日の会議に出席する筈だった
同僚の緑川さんが体調不良のため欠席_
今回の会議は外せないらしく、誰か代役で…
という所に私が適任だということになり今に至る
『はぁ……』
ふとため息を漏らすと隣の同僚の三木君が声を掛けてきた
三木 「ため息ついてどうした?」
『緑川さんが欠席だから私が会議に
出ることになったの』
三木「まぁ重いけど俺も出るから頑張ろうぜ」
……ちがう。
私が会議に出たくないのはそんな理由じゃない
その会議は私の会社の各部が集まる会議
実は彼もこの会議に出席するのだ
それは前から決まっていて私も知っていた
前ならこの状況を喜んだかもしれないけれど
今は行きたくないのが本音だ
『…うん』
気弱な返事をして午後からの会議に備えた
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『うっ………』
なんで今日に限って、、
会議室に行くと私の名前の前の席に彼の名前
まだ彼は来ていない
ここはもう振り切るしかない、仕事に集中。
会社のみんなは私たちが付き合っていることを
知らないからきっと大丈夫だろう
なんていう私の考えは浅くて
いざ会議が始まり彼が目の前にくると
彼に聞こえてしまうんじゃないかってくらい
心臓がバクバクしていた
課長「…ではここは蒼井からお話します」
急な振りに動揺しながらも必死に返事をした
『…っはいっ!』
緊張で声が震えてるのはきっと彼も見ているから。
彼の視線を感じて彼の方を向けない
一通り説明が終わり、多少の緊張感を持ちつつ
しばらくして会議は終わりを迎えた
三木「あなたお疲れ様っ!」
彼が私の肩をポンと叩く
『うん、三木くんもお疲れ様でした』
三木「急なあの振りであんなけ
言えたのまじすげぇ」
『私もほんとにビックリした、笑』
三木「ほんとよく頑張ったな」
そういって私の頭を撫でて “行くぞ” って
彼が見ていることも知らずに_
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!