あなたside
『…いってきます』
今日は三連休の中日である日曜日
“美咲と出掛ける”という嘘でもあり、
出掛けるための口実でもある事を彼に伝える
まだ彼とは仲直りしていなくて、
「…俺も出掛けるわ」
という短い返事があっただけ。
『昼過ぎには帰ってくるね』
まだ少し冴えない表情の彼に
そう言葉を残し、家を出た
___________________
少し、冷え込んできた夕方。
ほんとならもう家に帰っているはず、
だったんだけど私はまだ広くて青い空の下。
『電車が遅れてるなんてついてない、』
人がホームに飛び降りて、という聞いた事のある
ような事が現実に起こり、今私はそのおかげで
家に帰れなくなっている
タクシーを、と思ったけれどスマホの充電は
切れておりお金もあまり無い。
『…歩いて帰るしかない、か』
『ヒール、履いてこなきゃ良かったな~』
なんて呟きながら、手に持っているカバンを
ブラブラさせて歩を進める
??「……い、あなた……!!」
誰かがなんか言ってる……
??「お……い……あなた……!!」
声がだんだん近づいてくる
??「……おーい!!あなた…!」
その声は……
『み、三木くん!?』
三木「おう!こんなとこ歩いてどうした?」
『いや、電車乗れなくてさ~、
三木くんこそこんな所でどうしたの?』
三木「んー俺はたまたま通っただけだよ」
「てか、ここから歩いて帰るわけ?」
『うん……お金もないし歩くしかないなぁって笑』
三木「…乗せてこうか?」
『いや!いいよ!歩いて帰れるし、!』
三木「無理すんなって、足も痛そうだし」
『う……それはそうだけど、、』
三木「ほら、たまにはさ、俺に頼れよ」
『…分かった。じゃあよろしくお願いします…』
ということで、私は半ば強引な形で
三木くんの車に乗せてもらうことになった。
家も近くなってきた頃、私は慌てて彼に言った
『あ、じゃあここら辺で大丈夫』
三木「ほんと?家の前まで行くよ」
『あ、ほんとに大丈夫だから!!』
三木「そう?ならいいけど」
『じゃ、乗せてくれてありがとう!』
半分逃げるような形になってしまったのは
万が一翔くんと遭遇した時にバレたくないから。
彼の車が見えなくなったのを確認してから
残り僅かな家への道のりを進む
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。