第11話

#11
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2019/11/29 12:25


家の前に着くと、丁度、翔くんが家の中から



少し慌てたような顔をして出てきた

『……しょうく、』


“ん”、と言おうとした私の声は




彼の行動によって遮られ、




気づいた頃には私は彼の腕の中


私がびっくりして固まっていると、



「…すっげぇ心配した」



なんて言いながら更に抱きしめる力を強める彼




私はようやく我に返り彼を押し返そうとする


『……ねぇ翔くん、やめ』



「ない」


『……っ』


『…だって翔くん、うわき、、』





こういう時にこんなことしか言えない私は




彼の目にどう映ってるのだろう



「不安な気持ちにさせてごめん」



『………っ』



「でも、俺は浮気なんてした覚えないよ」



『………だからっ、寝てる時に、!』



『……まりって言ったじゃん、』



『…まり、って寝言で言ってたじゃん、』



風に冷やされた少し冷たい涙が頬を伝う


「だから、それは誤解だって言って……」


“ミャー”


『…この前の猫……』




彼が私を抱きしめる力が弱くなる



「おー、まり、元気だったか?」



「最近見かけなくて心配したぞ」


彼はしゃがみこんでその猫と楽しそうに話している




『……ま、り、、?』



「うん、そうかそうかちょっと待ってろ」



『…ねぇ、翔くん、、もしかして、』
 

「お、分かった?まりっていうのは」






「俺がつけた猫の名前」



「コイツ、真っ白じゃん?だからなんかいただろ?


真っ白い猫のキャラクター」


『…うん、分かるよ』


『…浮気、じゃなかったんだね、』


「てか、俺が浮気なんてすると思うか?」


『……思わな、い』


「だろ?まあ誤解が解けてよかったわ」



なんだか、1人で泣いて、1人で怒って、、、




そんな自分が恥ずかしく思えてきた


『…翔くん』


「ん?」

『ごめんね、』


「…何が?」


ほら、こうやって彼はいつも私が悪い時も




私を責めないんだよ、だからズルいんだよ



『…翔くんのこと疑って勝手に怒って』



「別にそんなこと」



それより、って彼は私の目から目線を外さずに



「お前と話せない方がよっぽど効いたわ」


そうやってクシャッと笑う彼の笑顔が好き



「このタイミングで言うのもなんだけどさ、」



『ん?なに?』



「蒼井あなたさん」



急にフルネームで名前を呼ばれ、




なんだか少し緊張してしまう


『はい、』
















「…櫻井あなたになってくれませんか」

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