そして問題児クラスの生徒達と話しながらイルマが来るのを待つ事10分程。
王の教室にイルマがやってきた。
イルマはスイの姿を見ると、そう首を傾げる。
スイはそんなイルマの前に立つと、ハンカチを差し出した。
「おじいちゃんにもらったやつでさ…」と話すイルマを見て、返しに来て良かったな、とスイは思う。
そして用も済んだのでそう言ってここを去ろうとしたのだが…。
思ったよりもスイは問題児クラスの皆に気に入られたようで、別れを惜しむ声が上がる。
しゅん、としている皆を見て心が痛まないわけがないけれど、始業に間に合わなくて先生に怒られるのも困るので、スイはそう説得しようとする。
が、そこでイルマの口から思いがけない提案が飛び出た。
しかし問題児クラスの皆はそれを迷惑だと思うどころか歓迎してくれるようなので、
そう言い王の教室を出ていった。
イルマは手を振りながら彼の姿を見送ると、腕を降ろし授業の準備をしようとして、そしてちょうどスイと入れ違いでアスモデウスとクララが教室に入ってきたのを見てそちらに駆け寄った。
イルマの姿を見て、アスモデウスとクララはパアッと顔を明るくし、元気よく挨拶した。
イルマの質問に2人はそう返し、そしてしゅんと眉を下げる。
イルマが微笑みながらクララの頭を撫でていたら、アスモデウスがそういえば、と口を開く。
笑顔でそう話すイルマを見て、アスモデウスの表情が少し暗くなった。
アスモデウスは神妙な面持ちでそう繰り返し、顎に手を当て思案する。
そんなアスモデウスを、イルマは不思議そうな顔で見た。
しかしぱっと表情を元に戻し、アスモデウスはそう返す。
なのでイルマも特に追及せず、「そっか」とだけ返した。
* * *
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!