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第1話

イルマとの出会い
562
2022/10/26 11:42
スイ
スイ
(…今日も、“いつも通り”だったな…。)
赤い瞳の悪魔──スイは、ぼんやりとそんな事を考えながら歩く。
スイ
スイ
(まぁ別に、いつも通りがダメってワケじゃないんだけどね。)
スイ
スイ
(それに、いつも通りじゃなかったとしても、どうせ…。)
モブ
ってーな、おい。どこ見て歩いてんだよ!
スイ
スイ
…っあ、ごめんなさい。
考え事をしながら歩いていたらドンと誰かにぶつかってしまったので、スイは顔を上げ謝った。
しかしぶつかった相手はいわゆる不良という部類に入るような悪魔だったらしく、それだけでは済ませてくれなかった。
モブ
あ?謝るだけで許されると思ってんのか?
モブ
そうだそうだ!
モブ
兄貴にぶつかっておいてその態度でいいと思ってんのか?
スイ
スイ
(うわぁ…取り巻きまでいるのか…どうしよ…。)
モブ
おい、聞いてんのか!?
スイがどうしようかと考え込んでいたら、それを無視されていると受け取ったらしく兄貴と呼ばれていた悪魔が殴りかかってくる。
スイ
スイ
っ…!?
そして驚いたスイは、反射的に魔術を発動させてしまった。
スイ
スイ
あなたは僕を恐れる Be  afraid  me !”
スイの魔力を含んだ声を聞き、殴りかかってきた悪魔はピタッと動きを止める。
そして、その場にへたり込んだ。
モブ
あ…あっ…。
モブ
す、すみませ…っ!俺、なんて事を…っ。
ガタガタと可哀想なくらい震える彼を見て、取り巻きの者達は大きく目を見開き、そして…。
モブ
お前っ、兄貴に何しやがった…!
スイ
スイ
(えっ、こっちに来ちゃうの…!?)
大きく腕を振り上げスイに攻撃しようとする。
スイ
スイ
(ちょっと待ってよ!このタイミングじゃ魔術も使えないし…!)
スイは襲ってくるであろう痛みに備えて目をギュッとつむった。





















でも、その痛みはいつまでたってもこなかった。
スイ
スイ
(あれ…?)
恐る恐る目を開けてみたら、スイを庇うように目の前に悪魔が立っているではないか。
一体誰なのか。スイがそれを問う前に、その悪魔は口を開く。
イルマ
イルマ
あのっ…!いじめとか、よくないと思います!
モブ
コイツ、問題児アブノーマルクラスの…っ!
モブ
くそっ、ここは逃げるぞっ…!
スイ
スイ
あっ、待って!
リーダーらしき悪魔を抱えて逃げようとする彼らを、スイは呼び止める。
皆が不思議そうに彼を見る中、スイはリーダーの悪魔の前で、パチンと指を鳴らしてみせた。
スイ
スイ
…うん、もう大丈夫。あっ、引き止めちゃって、ごめんなさい…。
スイがそう言うと、「おう…?」と戸惑いながらも不良達は去っていった。
イルマ
イルマ
ふぅ…。行ったみたいだね。
スイ
スイ
あっ、えっと、ごめんなさい、巻き込んで…。
気まずそうに視線を下げるスイに、スイを助けた青年──イルマは笑顔で返す。
イルマ
イルマ
ううん、大丈夫だよ。僕がやりたくてやったんだし。
イルマ
イルマ
それよりも、君は大丈夫?ケガとかしてない?
スイ
スイ
多分…。
イルマ
イルマ
なら良かった。…じゃあ、またね。
イルマはそう言うと、手を軽く振りながらスイの元を去っていった。
手を振られたら振り返すのが礼儀だろうか、とスイはイルマの姿が見えなくなるまで手を振り、そしてさぁ帰ろうかと踵を返した所で、足元に何か落ちているのに気が付いた。
スイ
スイ
これは…ハンカチ?
スイ
スイ
『イルマ』…。さっきの悪魔のだ。
イルマはこの学校では有名人なので、他の悪魔との交流が少ないスイでも名前を知っている。
スイ
スイ
丁寧に刺繍された名前…。大事な物、だよね?
スイ
スイ
明日、届けに行こうっと。
スイはそう決めるとハンカチを丁寧に畳み鞄にしまい、今度こそ家路に着いた。



*     *     *


作者
作者
初めましての方は初めまして、そうでない方はこんにちは、作者のカイです。
作者
作者
えー、友達に魔入間の沼に突き落とされて早半年。
作者
作者
まぁでも、こうやって小説を出すに至りました()
作者
作者
ぶっちゃけ自己満度100%の誰得小説ですが、楽しんでいただけたら嬉しいです!
作者
作者
あっ1つ補足を。
作者
作者
本編中で入間くんの事を「悪魔」と言っていますが、今回の語り手はスイくん寄りの三人称視点なので、これはスイくんから見た場合には悪魔になる、という事です!ややこしい💦
作者
作者
ここはミスではないので!他に誤字ってる可能性はアリ寄りのアリですg(((推敲しろ
作者
作者
ではまたっ。バイバイッ。

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