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第6話

赤いものさし。1
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2018/09/02 09:20

どきどきする心臓を押さえて、そっと扉を開いた。

すこしかびくさい空気を吸い込むと、ちょっとだけ、気持ちが落ち着いた。

カウンターに座っている図書委員にぺこりと頭を下げて、いつもの席に勉強道具を置く。

ぐるりと周囲を見回す。

グラウンド側の長机の端で、髪を長くたらした女子が、真剣な顔でマニキュアを塗っているのが見えた。

同じクラスの林田さんだ。

私が見ているのに気がつくと、わざとらしく背中を向けた。


(まだ、怒ってるのかな)







4月の末にあった修学旅行で、私は林田さんと同じ班だった。

私が言うのもなんだけど、林田さんも、クラスに友達がいない。

背がすらりと高くて大人っぽい。

同性の私でも、どきどきするくらい、きれいな人だ。


私の班は、あまりものの寄せ集めで、林田さん、中島くん、三年生になって一度も学校に来ていない高橋くんの4人だった。

当日、やっぱり、高橋くんは来なくて3人で行動することになった。

なのに、初日のオリエンテーリングのとき、林田さんは制服のスカートを超ミニにしていて、私たちの班はいきなり失格になってしまった。


「なんだよ、もう。俺、せっかくシャツインしたのに」


いつもは、制服のズボンを引きずるくらいずりさげている中島くんも、その時だけはちゃんと着ていたのだ。


「どうして、そんなにスカートを短くしてるの?」


私が聞くと、林田さんは肩をすくめた。


「だって、ミニの方が、オトコ受けするし」



「でも、モテる人はちゃんと着てても、モテると思うけど」

(そんなことをしなくても、林田さんはきれいなのに)


そういうつもりで言ったのに、林田さんは私をにらみつけた。



「なに、それ。あんた、自分が標準服着ててもモテるって、言いたいわけ」


「へっ?」



きょとんとする私を置いて、林田さんはさっさとバスに乗り込んだ。



「なんだよ、もうー。たのむよ」



中島くんが、文句を言いながらそのあとに続く。



(なに、それ。私だって、訳わかんないよ!)






そのあと、私たちはとても気まずい雰囲気の中で、三日間の旅行を終えたのだ。

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