第18話

747
2018/02/21 09:28
齋藤幸軌
頼みがある。
齋藤幸軌
…眞榮城の手術を無しにしてくれ。
黙っている齋藤幸軌以外の少年たち。
最初に口を開いたのは若松蒼だった。
若松蒼
幸軌、無しにして欲しい理由は?
齋藤幸軌は決めた強い意志を心の底にできた地面を蹴るように堂々と3人に明かした。
齋藤幸軌
俺は、眞榮城のことが好きだ。
だから…助けてやって欲しい。
橋長陽太
・・
依頼を破棄するんだな?
齋藤幸軌
ああ。
若松蒼
報酬がすべて無くなるけど…
いいんだな?
齋藤幸軌
…皆には迷惑をかけるが、俺は絶対
眞榮城を守りたい。
腹の底から出てくる熱がのどを通る。
齋藤幸軌
この通りだ。
齋藤は4人に向けて深々と頭を下げた。
浪谷は沈黙を貫きながら齋藤の艶やかな髪をじーっと見詰めていた。
若松蒼
頭上げろよ。
齋藤幸軌
いや、依頼を受けた俺が…
最後までやらなかったんだ…
まだ頭を下げ続ける。
若松蒼
頭上げろって言ってんだよ。
やっと齋藤は涙がつたった跡のあるいつも見せないその顔を4人に向けた。
若松蒼
俺らは別に依頼を受けただけだ。
本業は顧客なんていねぇ遊びだろ?
だからな─
若松蒼
眞榮城一華の手術を無しにしようぜ?
齋藤幸軌
……
齋藤の目からは涙がどっと流れた。
齋藤幸軌
っ…ありがとな…
さっきまで、のどの辺りにいた熱はのどを通り越し頭へ行き、目から涙となってあふれてきた。
心臓まで泣いている。
呼吸も落ち着かない。
若松蒼
あんまり泣くなってw
橋長陽太
目赤くなるぞーw
齋藤幸軌
ほんとに…ありがとな…
さっきまでの冷たい空気は齋藤幸軌の正直な眞榮城に対する感情をぶつけたことによってその空気は暖かいものとなった。
浪谷伊月
よかったな、齋藤。
齋藤幸軌
おう。
外も台風一過でグラウンドにできた大きな池も神々しいほどに輝いていた。

プリ小説オーディオドラマ