黙っている齋藤幸軌以外の少年たち。
最初に口を開いたのは若松蒼だった。
齋藤幸軌は決めた強い意志を心の底にできた地面を蹴るように堂々と3人に明かした。
腹の底から出てくる熱がのどを通る。
齋藤は4人に向けて深々と頭を下げた。
浪谷は沈黙を貫きながら齋藤の艶やかな髪をじーっと見詰めていた。
まだ頭を下げ続ける。
やっと齋藤は涙がつたった跡のあるいつも見せないその顔を4人に向けた。
齋藤の目からは涙がどっと流れた。
さっきまで、のどの辺りにいた熱はのどを通り越し頭へ行き、目から涙となってあふれてきた。
心臓まで泣いている。
呼吸も落ち着かない。
さっきまでの冷たい空気は齋藤幸軌の正直な眞榮城に対する感情をぶつけたことによってその空気は暖かいものとなった。
外も台風一過でグラウンドにできた大きな池も神々しいほどに輝いていた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。