第6話

6話 遺憾の意しかありません
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2021/12/10 04:00
レオ
レオ
『さっき新しいマイクが届いた!
 これでいつもの配信以外にも色々チャレンジできそう(^ω^)
 みんなお楽しみにー!』
休憩と同時にスマートフォンを開くと、新しい写真が投稿されていた。
(なまえ)
あなた
(ふふ。レオちん、いい笑顔)
マイクと一緒にピース姿で写る笑顔は明るくて、少しだけほっとする。

なかなか伸びない視聴者数や、CHIKAGEファンからの洗礼で
元気を失っていたレオちんだけど――

新たなチャレンジを通して、
少しずつでもまた配信に前向きになってくれたら嬉しい。

(なまえ)
あなた
(あれ……? レオちんからだ)
こっそり投稿をスクショしようとした指は、
上からにゅっと現れた通知によって遮られる。
レオ
レオ
『あなたさーん! 歌ってみたの候補、リストにしてみました』
(なまえ)
あなた
『えっ!?』
添付されたファイルを開くと、ずらりと曲名が記されたリストが表示される。

最近若者の間で流行っている曲。
自分の声質と合ってそうな曲。

リストには彼なりのコメントも書き込まれていて、
なんだかぐっと来てしまう。
(なまえ)
あなた
『すごい……レオちん、よくこんなに短い間にまとめたね』
レオ
レオ
『いえいえ! 大学の授業中に作業したんで楽勝です^^』
(なまえ)
あなた
いやいや! そこは真面目にやろうよ!
麗奈
悪かったですねテキトーにやってて
(なまえ)
あなた
うわっ!?
どうやら無意識に独り言を呟いていたらしい。
突然背後から聞こえた声に振り返ると、
コンビニのビニール袋をぶら下げた麗奈ちゃんが立っていた。
(なまえ)
あなた
麗奈ちゃん……心臓に悪いよ……
麗奈
こっちこそびっくりですよ。休憩しようと思ったら、
あなた先輩がニヤニヤしながらスマホとにらめっこしてるんですもん
(なまえ)
あなた
にっ……ニヤニヤ!?
私の隣に腰を下ろし、麗奈ちゃんはビニール袋からサンドイッチを取り出す。
麗奈
最近先輩やけに楽しそうですよね。
定時ダッシュしてることも多いし……
あ、もしかして彼氏できました?
(なまえ)
あなた
! ち、違うよ!! 私も麗奈ちゃんみたいに
定時後の時間を有意義に使おうと思って……
麗奈
ふーん? 怪しいなぁ
慌てる私を横目で見つつ、麗奈ちゃんは
つやつやの唇でサンドイッチをかじる。

そのまま片手でスマートフォンをいじり出した彼女に、
上手く誤魔化せたとほっとした……けれど。
(なまえ)
あなた
ん?
麗奈
わ、何ですか先輩
うっかり視界に入ってしまった彼女の画面に、思わず身を乗り出す。
(なまえ)
あなた
ごめん! 勝手にスマホ覗いたみたいになっちゃったけど、このニュース……
恐らく『何気なく』開かれた、ニュースアプリのトップ記事。
そこに表示されていたのは――
(なまえ)
あなた
『人気ゲーム実況者・CHIKAGEの十股交際疑惑』……!?
呆気に取られる私をさらに驚かせたのは、
麗奈ちゃんの冷めたような声だった。
麗奈
――ああ。『せんりくん』、まだ配信やってたんだ
(なまえ)
あなた
え……
麗奈
店追い出されてからどうしてるのかと思ってたけど、
相変わらずチャラいなぁ~
(なまえ)
あなた
あの……麗奈ちゃん、『せんりくん』って……
麗奈
え? CHIKAGEのことですよね?
当たり前のように答える麗奈ちゃんに、思考が追い付かない。
麗奈
確かに新規のファンはあんまり知らないのかもしれませんけど。
CHIKAGEって、元は万年ナンバーツーホストの千里ですよ
(なまえ)
あなた
え、ホスト!?
麗奈
確か『月下蝶』って言うんだっけ?
CHIKAGEのファンって店にいた頃からのお客さんが多いから、
界隈でもトラブル起こすことが多いみたいですね~
(なまえ)
あなた
麗奈ちゃん、詳しいね……
麗奈
学生時代の友達が一時期すっごい入れ込んでたんで。
ま、昔から女癖悪くてトラブルばっかりでしたけど
レオちんの自撮りで浄化されていた心に、もやもやと暗雲が立ち込める。

同じ事務所の先輩が不祥事。

トップを走る配信者のスキャンダルとなると
事務所もノーダメージでは済まされないだろうし、
何よりレオちんの配信に悪影響が及ぶかもしれない。
麗奈
先輩? おーい、せんぱーい。
……え、もしかして先輩、CHIKAGEのこと推してたとか……?
麗奈ちゃんに揺さぶられて正気を取り戻すまで、
私は呆然とニュースを見つめていたのだった。

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