第4話

4話 気持ちが追いつきません
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2021/11/26 04:00
心の準備を整える間も与えられず、アキ姉によって開け放たれたドア。

柔らかい陽射しが差し込むガラス張りの空間で、私達を待っていたのは――
レオ
レオ
初めまして、『あやっぺ』さん
来客用の大きなソファに座っていた
パーカー姿の青年が、くるりとこちらを振り返る。

柔らかいブラウンの髪に、少年のように無邪気な笑顔。

目の前にいたのは、紛れもなく――

私の最推し、『レオちん』だった。
レオ
レオ
えっと、あのー……あやっぺさん?
(なまえ)
あなた
はっ!! は、初めまして!!
レオ
レオ
あはは、なんか想像通りで安心しちゃった。
俺は笹浦怜央ささうられお。通称レオちんです
『想像通りのプロデューサー』で喜ぶべきか否か答えを出せないまま、
私はアキ姉に促されてソファへ座る。
アキ姉
アキ姉
普段からアンタの配信観てもらってるから話は早いわね。
怜央、今悩んでることを正直に話しなさい
レオ
レオ
はい……
アキ姉のさばさばとした声に促され、
レオちんは膝の上できゅっと拳を握る。
レオ
レオ
俺、未経験なのにBCプロモーションに入れてもらって、
デビューさせてもらうことになって……
自分なりに頑張って来たつもりでしたけど、
三ヶ月経っても全然視聴者数が伸びなくって
レオ
レオ
でも、CHIKAGE先輩とか他の所属の先輩たちは、絶好調じゃないですか。
俺だけ置いてかれてる気がするし、
コラボとかしても先輩達に迷惑かけてばっかりだし。
正直最近は焦ってばっかりで……
(なまえ)
あなた
レオちん……
ファンとして、いつだって彼の悩みや苦しみを理解して、寄り添ってあげたいと思って来た。
だって、それがファンの務めだから。
(なまえ)
あなた
(でも……)
いざ面と向かって彼の苦しみを耳にすると、
まるで自分のことのようにぎゅっと胸が苦しくなるのを感じる。
アキ姉
アキ姉
まさかとは思うけど、アンタ今の状況で100%頑張ってるとか
思ってるんじゃないでしょうね
レオ
レオ
と、とんでもないです!
まだまだ力不足な部分、たくさんあると思いますし
アキ姉
アキ姉
ならいいわ。焦っても良いことないし、頼れるプロデューサーも来たんだから
これからテコ入れして行けば良いだけよ
(なまえ)
あなた
そ、そうだよ! レオちんが悪いんじゃなくて、
まだ皆がレオちんの魅力に気付いてないだけだと思うし――じゃない。
『思います』し……
ぎこちない喋り方の私に、レオちんは
「タメ語でいいよ」とふんわりと微笑む。
レオ
レオ
いつも配信観てくれてたあやっぺさんが
サポートしてくれるって聞いて……
俺、すっごい嬉しかったです
アキ姉
アキ姉
アンタも働いてんのに悪いわね。無理しない範囲で十分だから、
この子に知恵貸してもらえると助かるわ
(なまえ)
あなた
そ、そんな! むしろ私は申し訳ないくらいで
レオ
レオ
申し訳ない? どうして?
(なまえ)
あなた
だって私、レオちんに与えてもらってばっかりだったから。
いつも自分が癒してもらうばっかりで、
レオちんがどうしたらもっと人気になれるかとか、
全然考えられてなくて……
レオ
レオ
そんなことないです!
凛と透き通る声に、はっと顔を上げる。

いつも私達を隔てていたモニターの画面は、今日は存在しなくて――

レオちんの瞳は、まっすぐに私へと向けられていた。
レオ
レオ
あやっぺさんは何万人もいる配信者の中から
俺を見つけてくれたじゃないですか。
俺がヘマした時もいつもコメントでフォローしてくれて、
言葉に詰まった時とかいつも話題振ってくれて
マイクに向かって一人で喋り続けるのって
実は結構孤独なんですよ、とレオちんは笑う。
レオ
レオ
でも、あやっぺさんがいてくれたおかげで、
俺は一人で配信やってるんじゃないんだって思えた
レオ
レオ
あやっぺさんが励ましてくれたから
失敗した時もまた頑張ろうって思えたし……
それだけで俺は嬉しかった、です
(なまえ)
あなた
(あ……ここ泣くところだ)
つんと鼻が熱くなるのを慌ててこらえ、私は頷く。
(なまえ)
あなた
……わかった。頑張ろう、レオちん。
一緒にBCプロで、一番の配信者を目指そう!
レオ
レオ
はい! よろしくお願いします!
こうして絶賛人気低迷中の配信者・レオちんと
ド素人プロデューサー(私)の、
奇妙な二人三脚が始まることになったのだった――

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