練習室を飛び出し、ドアに寄りかかるあなた。
あなたは寄りかかっていたドアをズルズルとしゃがみこむ。
手の震えが止まらない。
ダンス指導員の女性から浴びせられた罵声に、
過去の記憶がよみがえる。
『不細工がでしゃばんなよ!!』
『能力あっても不細工は不細工よ!!』
『不細工は大人しくしとけよ!』
その度にオンマに泣きついた。
でも、オンマは。
自分の手を自分で握りしめ、どうにか落ち着こうとする。
こんな時はいつも兄を思い出す。
兄の言葉を何度も繰り返しあなたはようやく落ち着いた。
大きく深呼吸をして、彼らのいる部屋に戻る。
二人は先に練習室に向かった。
あなたはさっとテーブルを少し片付けてから、
ドリンクとタオルを持って2人を追いかけた。
練習室に入ると、2人は動きの確認をしている。
間違った動きをしている2人に思わずあなたは、
そこへちょうど、
さっき話したダンス指導員ヌナが入ってきて、
物凄い形相で睨み付けてるヌナとあなたは目が合う。
睨まれて戸惑うあなたに、
指導員ヌナがドカドカやってきて、
あなたを押し退けた。
あなたは練習室を出る。
頭にオンマの言葉がぐるぐる回る。
ピシャリと顔を叩いて、気を取り直す。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。