僕たちは親なしだった。
幼い頃に捨てられて、孤児院で育った。
姉が十八歳、僕が十六歳になった時、二人で孤児院を出てボロアパートに引っ越した。
お互い必死にバイトして生活費を稼いだ。
生活は貧しかったけど、それでも孤児院での暮らしよりはずっとマシだった。
暴力といじめの繰り返しはひどく辛いものだった。
だから、 姉と二人の生活は僕にとって天国だった。
1Kの狭いアパートだろうがなんてことない。
今だに布団はぴったりと並べて敷いている。
それなのに、一年前姉は咲夜という恋人を作った。
咲夜は、姉に交際を申し込んだ際に言った。
「お金の心配はしなくていい。弟のことももちろん」
姉はその言葉を信じて、婚約を申し受けた。
弟ながら姉のことを馬鹿な人だと思った。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。