〈朝騒動から数日後……〉
私はみんなと登校しないためにも、先に出た。
〈 学校 〉
学校についた私、なんですが……
さとみくんがどや顔で喋り始めた
すごいよね。関わらないように頑張ろうとしてるのに、関わることになってるんだよね。
私は乙女ゲーの主人公か。
〈 3時間目 〉
真新しい教科書を……出すはずだった。
鞄をごそごそと漁るが、一向に見つからない。
クスクスとした嘲笑いが聞こえてきた。
何度も聞いたことのある笑い声だ。
頭の中で、どこを探しに行こうか考えていると、
声がかかった。
ドア付近で手招きをしているのは金髪の生徒だった。
〈 廊下 〉
そこには、もう一人、指定の制服ではなく私服の多分生徒がいた。
なんとなく雰囲気が似ていた。
私は笑った。私服生徒はそっか、というと座り込み、スマホをいじり始めた。
金髪の方の人が、数学の教科書を片手に聞いてきた。
取られると思っていた教科書はすんなり帰ってきた。
裏返してみて、確かに書いたはずの名前が書いてなかった。
渡された私の教科書と思われるものに、見るに耐えない罵声が書かれていた。
私は頭を下げた。
最初にちょっとばかりしゃべった私服生徒は壁にもたれかかって、私たちの様子を見ていた。
その人はマスクをしていて、服も中性的な服装で性別すら判別できない。
……やっぱり別人かな。
会話を聞き、思わず笑った。
そう言い、ニカッと新崎さんは笑った。
キーンコーンカーンコーン
チャイムがなり、私は青ざめた。始めての授業で遅れるなんて……
そう言い、私の手をつかみ、全速力で走り出した。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。