カーテンの隙間から入る光に目を細めた。
顔を洗って、服を着替えて、身支度を終えて。
いつも通りに思えた朝は、いつもよりも静かに思えた。
廊下に出ると、いつもと違うと実感できる。
リビングの前に立ち、ドアを開けようと手を伸ばし、その手を下げた。
そして、部屋戻り、バッグを持つと、シェアハウスを出た。
いつも通る、通学路。葉が全部散ってしまった木が並んでいるせいか、寂しいと感じた。
キッチンに行けば何か作れたじゃん。
リビングに置いたままだったね。
ため息をつくと、なんだか胸にぽっかり開いたような気持ちで、学校に向かった。
「あなた、あなた!」
カバンを見て、思い出した。
後ろから声が掛かり、振り向いた。そこにはころんくんが二つお弁当を持って立っていた。
不安気に名前を呼ぶと、ころんくんはお弁当を一つ私に差し出した。
そう言い、ころんくんは私の両頬をつまむとぐいっと引っ張った。
そう言うところんくんは去っていった。
紫苑がパンを口いっぱいに含みながら言った。
紫苑の目の前にはパンが10個ほどあった。いつもこの量を紫苑は食べている。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!