第26話

お弁当
3,450
2021/03/12 08:57
カーテンの隙間から入る光に目を細めた。
あなた

(……いつ部屋に戻ったっけ。)

顔を洗って、服を着替えて、身支度を終えて。
 いつも通りに思えた朝は、いつもよりも静かに思えた。
廊下に出ると、いつもと違うと実感できる。
あなた

みんなやっぱり帰ってきてない……か。

リビングの前に立ち、ドアを開けようと手を伸ばし、その手を下げた。
 そして、部屋戻り、バッグを持つと、シェアハウスを出た。
あなた

(なんでみんな私を避けるようになったんだろ。)

いつも通る、通学路。葉が全部散ってしまった木が並んでいるせいか、寂しいと感じた。
あなた

お腹減ったなぁ。

キッチンに行けば何か作れたじゃん。
あなた

持っていかなきゃならない教科書、忘れたなぁ。

リビングに置いたままだったね。
ため息をつくと、なんだか胸にぽっかり開いたような気持ちで、学校に向かった。







「あなた、あなた!」
寧々
寧々
あなた!!
あなた

え?あぁ

寧々
寧々
どうしたの?もう授業終わったよ?
あなた

え?あ、そっか。

あなた

あはは、ちょっとぼーっとしてた~

寧々
寧々
……ねぇ、ぼーっとしてる原因って……
紫苑
紫苑
おーい、飯買ってきたから食べよー
あなた

おっけー、どこで食べる……あ。

紫苑
紫苑
どうかしたか?
カバンを見て、思い出した。
あなた

(私、お弁当も財布も持ってきてない!!)

紫苑
紫苑
あ、飯忘れたか?しょーがねぇなぁ、私の一つやる……
ころん
あなたちゃん。
後ろから声が掛かり、振り向いた。そこにはころんくんが二つお弁当を持って立っていた。
あなた

こ、ころんくん……?

不安気に名前を呼ぶと、ころんくんはお弁当を一つ私に差し出した。
ころん
お弁当持ってきた
あなた

え?あ、ありがとう……

ころん
……はぁぁ~。
ころん
てかさ、朝、僕当番だったから朝ごはん作って待ってたんだよ?
ころん
なのに、リビングに来ないから僕君の部屋行ったんだよ。
ころん
なんで、僕置いて、朝ごはん食べずに行ったの!!
そう言い、ころんくんは私の両頬りょうほおをつまむとぐいっと引っ張った。
あなた

ひひゃい、ひひゃい痛い、痛い

ころん
明日からこんなことしないでね?絶対だかんね!!
そう言うところんくんは去っていった。
あなた

え???

紫苑
紫苑
まぁ、飯あって良かったな~。
紫苑がパンを口いっぱいに含みながら言った。
あなた

てかさ、いつも思ってたんだけど……

あなた

なんで、その量食べて太らないの?

紫苑
紫苑
へ?
紫苑の目の前にはパンが10個ほどあった。いつもこの量を紫苑は食べている。
寧々
寧々
ねぇ、あなた、すとぷり集めれる?
あなた

……たぶん無理。

寧々
寧々
なんで?
あなた

みんな昨日帰ってきてないみたいなの。

紫苑
紫苑
あへ?へもは、はほいほひはよな?あれ?でもさ、青いのいたよな?
寧々
寧々
紫苑、口にいれたまま喋んな。汚い。
紫苑
紫苑
寧々も仮面外れてるぞ。
寧々
寧々
えぇ?なんのことぉ?
紫苑
紫苑
いや、待て、そっちの方がキモイ。
寧々
寧々
誰がキモイですって?!付き合いたい女子NO.1の私がキモイ!?!
あなた

ちょ、ちょっと、落ち着いて二人とも……

プリ小説オーディオドラマ