第22話

ヒーロー
1,362
2020/08/04 08:40
「お待たせしました。」



席に向かうと、40代くらいのおじさんが2人座っていた。



『えーっと、おすすめのケーキとかってありますか?』



「おすすめですか?」



『はい。』



「私が個人的に好きなケーキは、ショートケーキとモンブランですね!」



『そうなんですね。じゃあ、ドリンクは?』



「そうですね、こちらの…」



メニューを見ようと、お客さんの方に1歩近づいた瞬間だった。



(カシャ)



…え?



なに、シャッター音?



小さい音だったけど確かに聞こえた。



横を見ると、さっきまで携帯を触っていたもう1人のおじさんが、



気味の悪い笑みを浮かべていた。



…え?もしかして、撮られた?



言いたいけど、もし私の勘違いだったら…



そう思って諦めた時、



(バンッ)



誰かがテーブルを叩いた。



『おいおっさん、今撮ったやつ消せよ!』



さっき、シュークリームを注文してた人だ。



『な、なんのことだ!?君の勘違いだろう!
言いがかりはやめてくれないか?』



『言いがかりなんかじゃないですよ。
俺、あなたが盗撮するとこ写真撮ってたんで。』



塩キャラメルパフェを注文してた人…



初めて会った人のために、こんな行動を起こしてくれて、ヒーローみたいだと思った。



『だ、だいたい!そんなに足を出してる方が悪いんだろ!そんなの、撮ってくださいって言ってるようなもんだ!そんな制服を着てるほうが悪い!』



今、カフェの制服をバカにしたの…?



『まじでいい加減に…』



「あの!」



シュークリームを注文した人の言葉にかぶせて声を出した。



「このカフェのことをバカにするのはやめてください。」



写真を撮られたのは私の不注意でもあるから、もうどうでもよかった。



でも、神崎さんのカフェをバカにされたことはどうしても許せなかった。



(ポンッ)



言い返したところで、誰かの手が頭の上に乗った。



「神崎さん…」



後は俺に任せて。



とでも言うようにウインクをして、



神崎「今すぐに撮った写真を消してください。
それが済んだらこの店から出ていってください。そして、もう二度といらっしゃらなくて結構です。いえ…」



ここまで言ってから、さらに近づき、



神崎「二度と来るな。



私たちに聞こえないくらい小さくて、



いつもより低い声でそう言った。



その後、おじさん達は出ていった。



「あ、あの、私のせいですみません。」



本当に申し訳ない気持ちでいっぱいだった。



店内には他のお客さんもいたのに…



神崎「何言ってるの!」



さっきの声と同じ人とは思えないくらい優しい声で、



神崎「あなたちゃんが謝ることじゃないでしょ?それに、俺嬉しかったんだから!」



「え?」



神崎「制服のこと言われた時に言い返してくれて!」



「あ、あれは!バカにされたことに腹が立って…」



神崎「そう思ってくれたことが嬉しいよ。

君たちもありがとう。あなたちゃんを守ってくれて。」



あ、そうだった、



「あの!本当にありがとうございました!」



『気にしないでください!たまたま目に入っただけなので!』



「なんとお礼をしたらいいのか…」



『あ、あの、もし良かったらなんですけど…』


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(パシャ)



何を言われるかと思ったら、



私との写真が欲しいって言うからびっくりした。


なんのお礼にもならないと思うんですけど…



『ほんとにありがとうございます!』



「い、いえ、そんなものでいいんですか?
えーっと、」



…名前知らない!



『あ、俺、花巻貴大っていいます!高3!』



「私2年なので、敬語やめてもらって大丈夫ですよ!」



花巻「ほんと!あ、こいつは後輩で、」



『国見英。1年です。』



花巻さんが3年生で、国見くんが1年生…



花巻「また来るね!」



国見「…パフェ、美味しかったです。」



「はい!待ってますね!」



そう言って2人は帰っていった。










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