第5話

バレー部
1,799
2020/07/30 14:00
(体育館)

「こんにちはー。」



力と成田は部室に行ったけど、私は先に体育館に来た。



『あ、あなたちゃん。』



名前を呼ばれて振り返ると、



「潔子さん!」



潔子さんが笑顔で立っていた。



相変わらず可愛いなぁ。



清水「ふふ。久しぶりだね。
澤村から聞いてるよ。今日もお手伝いよろしくね?」



「はい!任せてください!」



あ、今日は始業式だったし、朝は部活に行くつもりなかったからジャージ持ってきてないや…



いつもは体操服でやってるんだけど、



どうしよう。



(ガラガラ!!)



菅原「おーっす。ってあなた!もう来てたのか?早いな!」



澤村「お、ほんとだ。あれ、制服?」



「今日体操服持ってなかった…」



澤村「まじか。なら俺の貸してやるから、着替えてこい。」



…え?



いや、まぁそりゃ大地くんのジャージ着られるなんて嬉しい以外ないけどさ、



サイズがどう考えても合わないでしょ…



「いや、サイズ合わないよ?」



澤村「裾とかまくればなんとかなるだろ!」



なんでなんとかなると思ってるんだろう。



菅原「じゃあ俺の貸す!
まだ俺のサイズのが一回り小さいからな!」



大地くんのは絶対動きずらいしな…



「スガさん、貸してもらっていいですか?」



菅原「おう!」



一緒に部室に行ってジャージをもらった。



「じゃあ、着替えたらすぐ行きますね。」



菅原「待ってるな〜!」



よし、着替えるか。









…スガさんのでもやっぱり大きい。



私、そんなに小さい方じゃないんだけどな。



160cmって女子の平均より大きいよね?



あぁ、スガさんが大きいんだ。



ん?でも、大地くんと2cmくらいしか変わんないよね?



2cmでジャージのサイズって変わるのかな…



でも確かに大地くんのが大きく見えるんだよねー。


スガさん、細すぎるんじゃないかな?



って、みんな待ってるから急がなきゃ。



澤村side

「スガ」



菅原「んー?」



「俺とお前、ジャージのサイズ一緒だろ?」



菅原「そーだな!」



なんで自分の貸すって言ったんだよ…



「だったらわざわざスガがジャージ貸すことなかったんじゃないか?」


菅原「なんだよ大地ー、嫉妬か?」



ってにやにやしながら言ってきた。



「そんなんじゃない。」



菅原「だって、俺と大地が並んでたら、俺のがサイズ小さいって言っても嘘に聞こえないだろ?」



遠回しに俺が大きいって言いたいのか?



「スガ、ひょろひょろだもんな。」



菅原「余計なお世話だ!!

…とにかく、あなたにジャージを貸したいのはお前だけじゃないってこと。」



貸したいって…



俺は別に、あなたが忘れたって言うから貸そうと思っただけだ。



そう最初は思っていたはずなのに、



(ガラガラ)



あなた「すみません、お待たせしました。」



一回りも二回りも大きいサイズのスガのジャージを着てるあなたを見て、



あのジャージが俺のだったら…



なんて思ってしまった。


あなたside

「潔子さん!
私、ドリンク作ってきますね!」


清水「あ、ありがとう。あなたちゃん。」



1年生がまだだから、作るドリンクの量が少ないとはいえやっぱりこの仕事量を1人でやるのは大変だよね。



私がマネージャーになったら、潔子さんも楽になるんだろうけど…



どうしてもマネージャーになる勇気を持てない。



澤村「あなた?」



…ぼーっとしちゃってた、



中学の頃のことは忘れないと、



もう、昔とは違うんだから。



「ごめんね。今行く!」



私がドリンクを作っている間に休憩に入ったらしく、みんなにボトルを渡した。



田中「やっぱあなたのドリンクもうまいな!!潔子さんとはまた違ったうまさだ!」



菅原「田中は女子の作ったものならなんでもうまいって言って飲むだろ〜」



…確かに。



田中「ちょ、スガさん!?俺のことなんだと思ってるんすか!」



「ふふ、」



思わず笑ってしまった。



縁下「何笑ってるの、(ムニ)」



力が笑いながら頬をつねってきた。



「いひゃいよ、」



菅原「あなた言えてないぞー!」



そう言ってみんなが笑う。



やっぱり部活っていいなって思う瞬間だ。



澤村「はい!休憩終わり!練習再開するぞー。」



菅原「えー、もう終わりかよ!」



「頑張ってください!」



みんな「おう!」



みんなの笑顔好きだなぁ。



…でも、やっぱり旭さんと西谷がいないとどこか寂しい。



まだ、帰ってこないのかな、


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澤村「じゃー今日はここまで!
片付けして帰るぞー。」


私も片付け手伝わなきゃ。



とりあえずボトルでも洗いに行こ。



(水道)

(バシャバシャ)



水冷たい。



春とはいえまだ4月だもんなー。



冬に比べると全然へっちゃらなんだけどね。



(チャプチャプ)



…よし、終わった。



後はこれを運ぶだけ、



っと



(ヒョイ)



私の手からボトルが消えた。



「…力?空っぽのボトルくらい私でも運べるから!」


縁下「いいからいいから。俺に運ばせて?」



いつもそう。



私が何かを運ぼうとすると絶対に横取りしてくる。


「もー、私はそんなにかよわい女の子じゃないから大丈夫なのに…」


縁下「かよわくなくても、女の子でしょ?」



そうだけどさ…



「力、私に過保護すぎない?」



大地くんもだし、



私、自分で言うのもなんだけどしっかりしてる方だと思うんだけどな…



縁下「まぁ、あなたは他の女子とは違うからね。」



「まーたそういうこと言って。
好きな子に言わないとダメだよ?じゃあごめんけどそれよろしくね。私は潔子さん手伝ってくるから!」



縁下「それなら言う相手は間違ってないよ…



潔子さんの元に急いだ私の耳には、最後に力が言った言葉は入ってこなかった。


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(更衣室)

清水「あなたちゃん、今日もありがとうね。
あなたちゃんがいるとみんなのやる気も上がってる気がする。」



そう言って笑う潔子さんはほんとに『美しい』の一言だ。



「そんなことないですよー。
潔子さんに見られてると勝手にやる気が出てくるもんです!」



清水「あなたちゃん、いつもお手伝いに来てくれるのにマネージャーにはならないの?」



「あー、はい。
今のところやるつもりはないですね。」



清水「そっか…残念。
あなたちゃんがいてくれたら心強いのに。」



私もマネージャーにはなりたい。



なりたいけど…



中学の頃の嫌な思い出が頭をよぎって



どうしても1歩を踏み出せないでいる。



清水「あ、なにか理由があると思うけど、無理して言わなくていいからね?
今日みたいにお手伝いに来てくれるだけで大分助かってるし、言いたい時に言ってくれると嬉しいかな。」



…やっぱり優しいな。



こんなふうに優しくされると、いつかは言わないといけないっていう気持ちになる。



「はい、ありがとうございます。」



(コンコン)



清水「あ、澤村じゃない?
気をつけて帰ってね?また来てくれると嬉しいな。」



「はい!絶対またお手伝いに来ますから!
潔子さんこそ気をつけて帰ってくださいね?」



潔子さんは私から見てもほんとに美人だから心配だ。



清水「ふふ。大丈夫だよ。ありがとう。」



「じゃあ、失礼します。」



(ガチャ)



澤村「じゃあ帰るか!」



「うん。」

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