第15話

名前 ①
34
2023/01/30 14:58
一ノ瀬 櫂
一ノ瀬 櫂
さあ、どんどん食えよ?
蒼井 空
蒼井 空
は、はい……!

広い部屋に沢山の料理と飲み物。

それから、女子が好きそうなスイーツの数々。
一ノ瀬 彗
一ノ瀬 彗
そんなに緊張しないでください、
空さんの歓迎パーティーなんですから
一ノ瀬 凜
一ノ瀬 凜
そうよ、限りなく盛大にやらないと
蒼井 空
蒼井 空
(いや、盛大すぎでは……?!)

私が【裏】生徒会に入ることが決まった後、歓迎パーティーをしようとみんなが私を家に招いてくれた。

そこは小さい頃にお爺ちゃん、お婆ちゃんとよくお邪魔していた一ノ瀬おじさんのお屋敷だった。
蒼井 空
蒼井 空
(……相変わらず、広いお家だなぁ……)
一ノ瀬 凪
一ノ瀬 凪
はい、どうぞ

凪くんはスイーツが盛られたお皿を私に差し出してくれた。
一ノ瀬 凪
一ノ瀬 凪
さっき、スイーツ見てたでしょ?
蒼井 空
蒼井 空
! ……ありがとう!
蒼井 空
蒼井 空
(…凪くん…本当に人のことよく見てるよなぁ…)

そんなことを思いながらテーブルに置かれたスイーツを口に運ぶ。
蒼井 空
蒼井 空
ん!美味しい!
一ノ瀬 凪
一ノ瀬 凪
空ちゃん、甘いの好き?
蒼井 空
蒼井 空
うん!大好き!
一ノ瀬 凪
一ノ瀬 凪
じゃあ、律と気が合いそうだね

凪くんがそう言いながら“彼”が座る席に視線を移す。
蒼井 空
蒼井 空
!!?

その視線の先には大量のスイーツを無表情で頬張る“彼”の姿があった。
一ノ瀬 律
一ノ瀬 律
……………
蒼井 空
蒼井 空
(…あれ…全部1人で食べるのかな…?)
蒼井 空
蒼井 空
(しかも、無表情で……)
一ノ瀬 凪
一ノ瀬 凪
律、すごく嬉しそう
蒼井 空
蒼井 空
(えぇ?! 嬉しそう……? 全く表情が読み取れないんですけど?!)
蒼井 空
蒼井 空
………凪くんは、食べないの?
一ノ瀬 凪
一ノ瀬 凪
うん、僕は甘いの苦手だから
蒼井 空
蒼井 空
そう…なんだ……
蒼井 空
蒼井 空
(…何か意外だな… 凪くんの方が甘いの好きそうな感じなのに…)
一ノ瀬 凪
一ノ瀬 凪
今、僕の方が甘いの好きそうな感じなのに…って思った?
蒼井 空
蒼井 空
え?!

凪くんはニコニコしながら“やっぱり”と言う。
蒼井 空
蒼井 空
…凪くんて…もしかして、超能力者?
一ノ瀬 凪
一ノ瀬 凪
いやいや、そんなわけないでしょ
一ノ瀬 凪
一ノ瀬 凪
…でも、まぁ…こんなだから捨てられちゃったのかも…
蒼井 空
蒼井 空
え……?
一ノ瀬 凪
一ノ瀬 凪
ううん、なんでもない
蒼井 空
蒼井 空
(……今、一瞬…気のせい……?)
一ノ瀬 凪
一ノ瀬 凪
あ……

不意に凪くんの白くて長い指が私の頬に触れる。
蒼井 空
蒼井 空
一ノ瀬 凪
一ノ瀬 凪
クリーム付いてるよ

クスッと笑いながら、凪くんはそのクリームを自分の口に運んだ。
蒼井 空
蒼井 空
っ………
蒼井 空
蒼井 空
(凪くん、心臓に悪い……!)
一ノ瀬 凜
一ノ瀬 凜
ちょっと!
蒼井 空
蒼井 空
わっ……
一ノ瀬 凜
一ノ瀬 凜
さっきから凪ばっかり空ちゃんと
イチャイチャして、ズルいじゃない!

凜さんが私を後ろから抱きしめながら言う。
蒼井 空
蒼井 空
凜さん! って…
蒼井 空
蒼井 空
イチャイチャなんてしてないです…!
一ノ瀬 凜
一ノ瀬 凜
あら、そうなの?

私は思いっきり縦に首を振った。
一ノ瀬 凜
一ノ瀬 凜
じゃあ、私も混ぜてくれる?
一ノ瀬 櫂
一ノ瀬 櫂
それなら、俺も!
一ノ瀬 凜
一ノ瀬 凜
あんたはダメ
一ノ瀬 櫂
一ノ瀬 櫂
はぁ? なんでだよ!
一ノ瀬 彗
一ノ瀬 彗
まぁまぁ、いいじゃないですか
一ノ瀬 凜
一ノ瀬 凜
……彗、あんたもなの?
一ノ瀬 彗
一ノ瀬 彗
みんな、空さんと話したいんですよ
一ノ瀬 彗
一ノ瀬 彗
そうですよね? 廉
一ノ瀬 廉
一ノ瀬 廉
うん
一ノ瀬 凜
一ノ瀬 凜
…結局、みんなってわけね…
一ノ瀬 凪
一ノ瀬 凪
ただ一人を除いてね

その言葉の通り、依然として大量のスイーツを嬉しそうに(?)頬張る“彼”にみんなの視線が集まる。
一ノ瀬 律
一ノ瀬 律
……………なに?
一ノ瀬 凜
一ノ瀬 凜
律はこの可愛い空ちゃんと話すよりも、
そのスイーツがいいっていうの?
一ノ瀬 律
一ノ瀬 律
別に…
話そうと思えばいつでも話せるだろ
一ノ瀬 律
一ノ瀬 律
こいつも【裏】生徒会の一員なんだから
蒼井 空
蒼井 空
一ノ瀬 律
一ノ瀬 律
じゃ、俺はそろそろ部屋に戻るわ
一ノ瀬 律
一ノ瀬 律
明日の予習とかしないといけないし、
スイーツこ  の  残  りはまた後で食べるから

“彼”はそう言うと部屋を出て行ってしまった。
一ノ瀬 凜
一ノ瀬 凜
…よく言うわよ、空ちゃんのことが心配で勧誘するのを散々反対してたくせに…
一ノ瀬 彗
一ノ瀬 彗
確かに、律には滅多に意見を曲げない
お堅いところがありますからね
一ノ瀬 櫂
一ノ瀬 櫂
本当に良かったよな、説得できて
一ノ瀬 凪
一ノ瀬 凪
きっと、空ちゃんの一生懸命な気持ちが伝わったんだよ

微笑みかけてくれた凪くんに、私も微笑み返す。
蒼井 空
蒼井 空
……うん…そうだといいな
一ノ瀬 廉
一ノ瀬 廉
……………
蒼井 空
蒼井 空
……? 廉くん、どうかした?

私は、何故か私を見ている廉くんの視線に気づき、問いかけた。
一ノ瀬 廉
一ノ瀬 廉
…いや、ずっと気になってたんだけど…
あんたって律のこと名前で呼ばないよね
蒼井 空
蒼井 空
へ?
一ノ瀬 廉
一ノ瀬 廉
俺たちのことは名前で呼んでるのに
蒼井 空
蒼井 空
そんなこと……

廉くんに言われて、昨日“彼”に会ってからの記憶を辿っていく。
蒼井 空
蒼井 空
(……あるかも……)
一ノ瀬 彗
一ノ瀬 彗
そう言われてみれば……
一ノ瀬 凜
一ノ瀬 凜
確かに、そうよね
一ノ瀬 櫂
一ノ瀬 櫂
何か理由があるのか?
蒼井 空
蒼井 空
あ、えっと……
一ノ瀬 凪
一ノ瀬 凪
……………



────── 理由……?


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