学園長室に入ってきたのは、ついさっき会ったばかりの“彼”だった。
………あれ…学園長と副学園長は?
いや、無視かいっ!!
お二人は別の仕事があるとかで
さっき急遽出ていかれたわよ。
それより、もう空ちゃんと会ってたのね
……空ちゃん……?
凜さんの声掛けで私の方に目を向けた“彼”が、ジッと私を見て一言。
……えっと……誰?
………は?
ついさっき会ったじゃん!
15分くらい前に、門の近くで!
………そうだっけ?
そうです……っ!!!
ははっ……悪いな、
こいつ人の顔覚えられないんだ
(えぇー………)
……………あ、思い出した。
チンピラに胸ぐら掴まれてた女
え…
ん?
お?
あら
……
“彼”の発言により、一瞬、その場は沈黙に包まれた。
……それ、本当なんですか?
何それ、どういうこと?!
その話、もうちょい詳しく!
空ちゃん、随分と大胆だね〜
…………
そして、みんなの視線が一気に集まる。
(ひぇ………)
チンピラみたいな男子生徒に絡まれてた
気の弱そうな男子生徒を助けに入って、胸ぐらを掴まれたんだよ
だ、だって…放っておけなくて…
気持ちは分かりますが、
女性一人では危険すぎますよ
そうそう、何かあったら大変だから
その勇気は大したもんだけどな
僕は、気の強い女の子好きだよ
今、お前の好みなんて聞いてねぇ
…………
…あの時、俺が助けてなかったら
今頃その顔に傷がついてたかもな
そ、それは………
ていうか、そんな序盤から見てたなら
胸ぐらを掴まれる前に助けてくれたら
よかったじゃない!
どう対処すんのか、興味があったんだよ
性格悪っ……!
でも、怪我がなくてよかったね
凪くんのその言葉に私はゆっくり頷いた。
……うん……
可愛い顔に傷がついたら大変だものね
凜さんはそう言いながら私の頬を撫でる。
凜、どさくさに紛れてスリスリすんな
ちっ………
(また舌打ちした…!)
……………それで、誰なの?
“彼”は心底どうでもいいというような目で私を見ながら言った。
彼女は蒼井 空さん、
学園長のお孫さんですよ
…ああ、なるほど…こいつが…
こら、こいつって言うのはやめなさい
……はいはい
みんなさっきまで自己紹介してたのよ
自己紹介?
そうそう、あとはお前だけだから。
役職と名前と好きな食べ物言えよな!
いや、絶対好きな食べ物は関係ねーだろ
櫂さんに軽くツッコミをいれて、面倒くさそうにため息をついた“彼”の冷たい視線が私を捉える。
っ………
(……拒絶…されてるみたい……)
【裏】生徒会、議長、一ノ瀬 律
以上
業務連絡のように自己紹介を済ませた“彼”に代わって、今度は凪くんが付け足すように口を開く。
律はね、こう見えても
甘い物が大好きなんだよ〜
そ、そうなんだ……
こう見えてもってなんだよ。
つか、余計なこと喋ってんじゃねーよ
7月10日生まれの蟹座で、
学年は僕達と同じ2年生
おい、聞いてんの?
血液型は……
AB型
!
今まで黙っていた廉くんが突然口を開くと、みんな一斉に視線を向ける。
…………
廉、お前もかよ
……律が怖い顔してるから
してねーよ、怖い顔なんて
………してる
してねーって
(…仲良さそう…兄弟だから当然か…)
私はじゃれ合いながら言い合いをする2人を見て、
ふと、ある事に気づいた。
(…あれ? でも、この2人似てない…?)
そして、他のみんなにもそろりと目を向ける。
(いや、この2人だけじゃない…
この人達…みんな似てない…)
…一体、どういうことなの…?!
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