第12話

良くも悪くも
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2022/06/21 07:27

あの後、無事に【裏】生徒会室に到着した私達を待っていたのは、一ノ瀬兄弟の皆さんだった。
一ノ瀬 彗
一ノ瀬 彗
空さん…!大丈夫ですか?
一ノ瀬 凜
一ノ瀬 凜
空ちゃん、怪我してない?
今、拘束こ れ解いてあげるからね!
一ノ瀬 櫂
一ノ瀬 櫂
空、喉乾いてないか?
お茶とジュースと青汁もあるぞ!
蒼井 空
蒼井 空
私は大丈夫です。
ご心配おかけしてすみません
一ノ瀬 彗
一ノ瀬 彗
そんな、謝らないでください。
空さんは何も悪くないんですから
一ノ瀬 凜
一ノ瀬 凜
そうよ。
とりあえず、無事で良かった
一ノ瀬 櫂
一ノ瀬 櫂
そうだ、お腹空いてないか?
食べ物も沢山あるから遠慮するな!
一ノ瀬 凜
一ノ瀬 凜
あんたねぇ…
今、食欲があるわけないでしょ?
一ノ瀬 凜
一ノ瀬 凜
あと、青汁はいらないから
一ノ瀬 櫂
一ノ瀬 櫂
何言ってんだよ、青汁は体にいいんだぞ
一ノ瀬 凜
一ノ瀬 凜
そういう問題じゃないっつーの!
一ノ瀬 彗
一ノ瀬 彗
2人ともやめてください、こんな時に
蒼井 空
蒼井 空
あははは……

そんな3人のやりとりを見ていた私に、横から膝掛けを差し出してくれたのは廉くんだった。
一ノ瀬 廉
一ノ瀬 廉
………これ、良かったら使って
蒼井 空
蒼井 空
廉くん、ありがとう
一ノ瀬 廉
一ノ瀬 廉
…….うん……それと……
蒼井 空
蒼井 空
……?
一ノ瀬 廉
一ノ瀬 廉
………あんたが無事で良かった
蒼井 空
蒼井 空
蒼井 空
蒼井 空
(めっちゃいい子…!弟にしたい…!)
一ノ瀬 凪
一ノ瀬 凪
空ちゃん
蒼井 空
蒼井 空
凪くん…!
一ノ瀬 凪
一ノ瀬 凪
…ごめん…油断してた。
僕が一緒に【裏】生徒会室に行ってたら
こんな事にはならなかったはずなのに…
一ノ瀬 凪
一ノ瀬 凪
本当にごめん……
蒼井 空
蒼井 空
ちょっ…凪くん、頭上げて…?
凪くんのせいじゃないんだから……!

申し訳なさそうに何度も頭を下げる凪くんを
私は必死で止めた。
一ノ瀬 律
一ノ瀬 律
こいつの言う通りだよ、凪
一ノ瀬 凪
一ノ瀬 凪
律……
一ノ瀬 律
一ノ瀬 律
にしても、卑怯な手口だよな。
別のやつに攫いに行かせるなんて

その言葉で私はあの男子生徒のことを思い出す。
蒼井 空
蒼井 空
(あ……)
蒼井 空
蒼井 空
違うの…! あの人は…
一ノ瀬 律
一ノ瀬 律
わかってる。
共犯のやつは指示されて仕方なくお前を連れ去ったんだろ?
一ノ瀬 律
一ノ瀬 律
…でもな、どんな事情があったにしても
こんな事をしていい理由にはならない
蒼井 空
蒼井 空
…そう…だけど…
一ノ瀬 彗
一ノ瀬 彗
大丈夫ですよ
蒼井 空
蒼井 空
彗さん……
一ノ瀬 彗
一ノ瀬 彗
律は血も涙もないように見えますが…
実は結構優しいので安心してください
一ノ瀬 律
一ノ瀬 律
おい、笑顔でディスってんじゃねぇ
一ノ瀬 律
一ノ瀬 律
……つか、何で自分を攫ったやつのことをそんなに気にしてんの?

“彼”は私の不服そうな表情を見て言った。
蒼井 空
蒼井 空
……それは……
蒼井 空
蒼井 空
あの人の心が壊れそうだったから……
一ノ瀬 律
一ノ瀬 律
壊れる……?
蒼井 空
蒼井 空
あの2人の間にどんな事情があるのかは
知らないけど、多分、あの人はずっと
言いなりだったんだと思う
蒼井 空
蒼井 空
自分を押し殺して、もうどうにでもなれ
って、自暴自棄になってる感じがしたの
蒼井 空
蒼井 空
だから、助けてあげたくて……
一ノ瀬 律
一ノ瀬 律
…………
蒼井 空
蒼井 空
何言ってんだって感じだよね
蒼井 空
蒼井 空
……でも…この一件でまたあの人の立場が危うくなったら、今度こそ本当に……

視線を落とす私を見て、小さくため息をついた“彼”が口を開く。
一ノ瀬 律
一ノ瀬 律
……………わかった
蒼井 空
蒼井 空
一ノ瀬 律
一ノ瀬 律
そこまで言うなら、
今回はお前の意見を尊重する
蒼井 空
蒼井 空
本当に……?
一ノ瀬 律
一ノ瀬 律
ああ
蒼井 空
蒼井 空
…私が処分を与えないって言っても…?
一ノ瀬 律
一ノ瀬 律
当事者であるお前がそうするなら
これ以上、奴を咎めることはしない
一ノ瀬 律
一ノ瀬 律
お前らも、いいよな?
一ノ瀬 彗
一ノ瀬 彗
はい、空さんがいいのなら
一ノ瀬 凜
一ノ瀬 凜
一発殴ってやろうかと思ってたけど
空ちゃんのお願いなら仕方ないわね
一ノ瀬 櫂
一ノ瀬 櫂
空と律が決めた事なら、異議はない
一ノ瀬 凪
一ノ瀬 凪
もちろん、仰せのままに
一ノ瀬 廉
一ノ瀬 廉
あんたがいいなら、それでいいよ
蒼井 空
蒼井 空
(……みんな……)
一ノ瀬 律
一ノ瀬 律
そういうことだから、心配するな
蒼井 空
蒼井 空
ありがとう……!
一ノ瀬 律
一ノ瀬 律
…別に…俺は判断を委ねただけ
一ノ瀬 律
一ノ瀬 律
この選択が良くも悪くも…
最終的にどうなるかは奴次第だから
蒼井 空
蒼井 空
うん、わかってる。 …でも…
蒼井 空
蒼井 空
ありがとう
一ノ瀬 律
一ノ瀬 律
………お前って、本当にお人好しだよな
蒼井 空
蒼井 空
だって、目の前で困ってる人や辛そうにしてる人がいたら放っておけないじゃん
一ノ瀬 律
一ノ瀬 律
………そこが、お前の良いところなんだろうな………
蒼井 空
蒼井 空
え?
一ノ瀬 律
一ノ瀬 律
あのさ、
蒼井 空
蒼井 空
……?
一ノ瀬 律
一ノ瀬 律
…朝は…ごめん…
蒼井 空
蒼井 空
一ノ瀬 律
一ノ瀬 律
少し言い過ぎた
蒼井 空
蒼井 空
あ、いや…私は気にしてな…
一ノ瀬 凜
一ノ瀬 凜
本当よ、このバカ
一ノ瀬 櫂
一ノ瀬 櫂
そうそう、女の子には優しくしないとな
一ノ瀬 律
一ノ瀬 律
は? 何でお前らが入ってくんだよ
一ノ瀬 凜
一ノ瀬 凜
あんたがすっとこどっこいだからよ!
一ノ瀬 櫂
一ノ瀬 櫂
そうだぞ!すっとこどっこい!
一ノ瀬 律
一ノ瀬 律
櫂、お前は言いたいだけだな?
蒼井 空
蒼井 空
あははは……
蒼井 空
蒼井 空
(…まさか、謝ってくれるなんて…)


こうして、無事(?)に終わった学園生活の初日。

私のプチ誘拐事件の報告を受けた学園長お爺ちゃんはというと、あまりのショックに倒れてしまったとか…

それはそうと、この初日でわかったのは
学園こ こがめちゃくちゃ広いってことと、
【裏】生徒会っていう特殊役員組織があるってこと。

それから、最初は嫌なやつって思ってた人が意外と優しかったこと。

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