紫耀side.
『もう泣かないで、』と言う岸くん。
今までのは、全部夢、?
きしくん…、岸くんっ、
『 岸くんっ!』と勢いよく抱きしめた…
はずだった。
岸くんの身体には触れられなかったんだ。
『 ごめんな…、』
と微かに聞こえた。
俺は現実を突きつけられた気がした。
悲しみ、苦しみ、悔やみ、恐れ、そして怒り…
全ての感情が俺を襲う。
『 …っ、きしくんのばかっ、なんで死んじゃったんだよっ…、
俺な?もっともっと岸くんと行きたい場所あったっ、食べたいものもあった、したいことだって…、なのにっ、なんで…、』
あぁ、岸くんは何にも悪くないのに、。
俺は何を言っているんだ。
『 そうっ、だよな…。ほんとにっ、なんでだろうなっ、ごめん、ごめんなぁ…、』
えっ、うそでしょ、?
死んでまでたくさん謝ってる。
こんな俺なら、怒るのが普通だろ、
なんていい人なんだろう。
岸くん…、好きだよ。
『 っ…、ばかぁ!』
『 ごめんっ、ほんとにごめんっ、』
この日の夜はいっぱい泣いたね。
泣いて泣いて、泣き疲れて、いつのまにか2人で寝ていたね。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。