第14話
Stage3-3
その後しばらく経ってからの、ある週末のことだった。
風真はすっかり暗くなったドルチェ部屋のなかで、電話越しにマネージャーに頭をさげていた。
通話が終わると、今度は母親に電話をかける。
状況をつたえて、通話を終える。
はぁ、とため息をついて、ひとまず電気をつけた。
部屋の時計は夜の九時半をしめしている。
夜のダンスレッスンを終えたのは七時だったはずだが、個人レッスンだったのがよくなかった。
荷物をとりにドルチェ部屋に寄り、ちょっと休憩のつもりでソファに腰かけて、そこからすっかり爆睡してしまっていた。
まだ活動といえば、ほとんどが商業施設でのステージやレコード店での小規模な握手会、おなじ事務所のアーティストの前座に歌わせてもらうくらいなのだが、それでも一歩一歩たしかに仕事は増えてきていた。
ステージが増えると、課題も増えてくる。
ダンスのミスであったり、歌声の伸びであったりが気になって、個人的に受けさせてもらうレッスンも多くなった。
くわえて、高校生としての学業だ。
最近めっきり気温が高くなったこともあって、すっかりつかれがたまっていた。
ふぁあ~と大きなあくびをすると、盛大にお腹が鳴った。
空になった箱の底に、紙切れが落ちている。
そこには『食っといた。ごちさんきゅー』という汚い文字が書かれていた。
風真は「あいつ、今度絶対メシおごらせる!」と心に誓って、とりあえず今は近くのコンビニにでかけることにした。
外に出ると、昼には真夏のようだった気温もすっかりさがっていた。
かわりにじっとりとした湿度のある、肌にまとわりつくような風が吹いている。
いやな季節だな、と思いながらエレベーターを降りたところで、おや、と思った。
一階にあるダンススタジオに、まだ明かりがついている。
この時間はさすがに営業時間外のはずだ。
ふしぎに思いながら、中に入ってみる。入り口のドアの鍵は開いていた。
おそるおそるスタジオをのぞきこんで、風真は息をのんだ。