第11話
Stage2-3
唯は収録を思い出して、顔をしかめた。
ドルチェはやたら個性的なメンバーを集めたグループだった。
なかでも思い出すのは、ピンクの髪をした男の娘だ。たしか、白雪風真という名前だった。
はきはきとした受け答えをしていて、華があって──そして、最高に気にくわなかった。
以前、宇瑠がファンだと言っていたから口には出さないけれど。
アイドルでピンク担当といえば、だいたいが花形だ。正直、風真にはそれを担うだけの素質がないわけではなかったと思う。
それなのに、ああいう奇抜なかっこで注目を集めようとしている。
それが、気にくわない。
実力で勝負をしようとせずに、努力をしようとせずに、楽な方法で注目を集めて人気を得ようとしているのだ。
ううん。そんなこと願わなくても、すぐにそうなるだろう。
今はアイドル戦国時代。
数多くのアイドルが日々デビューを飾り、夢半ばにして消えていく。
ドルチェがそこそこ注目されているのも今のうちだけだ。
とくに女装アイドルなんて、すぐにおなじようなキャラがデビューしてきて、かぶって、飽きられて、そうして知らぬまに消えていく。
唯は無言で宇瑠のコゲた卵焼きと春巻きを交換して食べた。……苦い。
お茶に手をのばして、ふと動きを止めた。
宇瑠のカバンにつけられているキーホルダー、これは……。
にぎったペットボトルがメキッと音をたてた。