第8話
Stage1-4
それから、収録の日はすぐにやってきた。
そろいの衣装に身を包み、ドキドキしながらスタジオ入りをすませて──
風真は、一騎と一緒に楽屋を出ながらため息を落とした。
緊張のなか、わけもわからないままに収録を終えてしまっていた。
まだ緊張がぬけきらないのか、胸を軽くおさえながら一騎が苦笑いをうかべる。
話をしながら歩いていると、廊下の向こうから他の出演者たちがやってきた。
次の収録に参加するアイドルグループ、『さくら道』だ。
声をかけると、みんな笑顔であいさつを返してくれる。
さすが人気女性アイドルグループとあって、まぶしいくらいに華やかでキラキラとしていた。
……のだが、
そのなかのひとりが、風真に対して鋭い視線を向けていた。
黒髪のさらさらショートボブに、くりっとした大きな目が特徴のアイドル。さくら道の中心メンバーのひとりである、有栖川唯だ。
答えながら、風真はただ戸惑った。
人気アイドルとあって、有栖川唯のことは風真も知っている。知ってはいるが、こうして顔をあわせるのは初めてのはずだった。
それなのに、有栖川唯は顔にでかでかと『大キライ!』と書いて風真を上から下までながめ、「チッ!」と舌打ちまでしたのだ。
嫌われるようなことをした覚えは、今のところ、たぶん無い。